自社所有の居住用マンションを社宅から商品倉庫に用途変更した場合

こんにちは。税理士の石川です。消費税の最近の改正について応用ケースを考えてみました。

令和2年度改正

居住用の賃貸マンションや賃貸アパートなど居住用賃貸建物を取得等したときの支払い消費税は、仕入税額控除ができなくなりました(消法30⑩)。

消費税法改正のお知らせ(令和2年4月)

令和2年10月1日以降に取得等した居住用賃貸建物について既に適用されています。

対象としてパッと思い浮かぶのは地主さんの賃貸経営ですが、法人が社宅として社員に貸すために居住用の建物を取得したり建設する場合も入ります。

救済措置

取得等のときに仕入税額控除できない代わりに救済措置があります。具体的には、取得した課税期間の開始から3年を経過する日の属する課税期間(第三年度の課税期間)までに居住用の入居者が出て行って、新たに事務所用として使う入居者が入ったなど、賃貸目的が変わったときは、第三年度の課税期間において精算します。第三年度の課税期間までに売却した場合にも精算できます(消法35の2)。

課税業務用への変更は?

居住用としての賃貸は、消費税は非課税とされていますが、事務所用として賃貸するときの賃貸料は消費税の課税取引です。上記の「事務所用に賃貸目的が変わったとき」とは、非課税賃貸用から課税賃貸用に変更したときを指しています。

この規定は課税賃貸用に変更したときに適用されるので、課税業務用に変更したときは適用されません。
例えば、法人が社宅として購入したマンションの一室を商品倉庫に用途変更した場合は、賃貸ではなく自分で使っているので、課税賃貸用への変更に当てはまりません。

非課税業務用から課税業務用への転用

さて、消費税法にはもともと、非課税業務用として購入した資産(本体価格100万円以上。棚卸資産を除く)を課税業務用に用途変更した場合の調整(消法35)という規定があります。これは適用されるでしょうか?

居住用賃貸建物を商品倉庫として使うというのは、非課税業務用から課税業務用への転用と言えそうですが…。

条文を見てみますと、転用が適用されるのは、「個別対応方式(正確には、消法30②一に定める方法)により非課税資産の譲渡等にのみ要するものとして仕入れに係る消費税額がないこととした場合において(消法35)」となっています。
居住用賃貸建物の取得時も支払った消費税につき仕入税額控除できないという点は同じですが、居住用賃貸建物については「消法30①の規定は適用しない」という書き方です。

この書き方だと、居住用賃貸建物の取得等は「個別対応方式で計算されて仕入れに係る消費税がないこととした場合(消法30②というのは消法30①の場合分け)」に当てはまらないので、転用の適用はないと考えた方がよさそうです。