国税庁の軽減税率Q&Aを見てみよう その2

こんにちは。消費税にうるさい税理士 石川です。

軽減税率スタートまであと1カ月半。国税庁が軽減税率のQ&A、今月中には見終わらねば。

お弁当に割り箸、お手拭きをセットにして販売した場合、消費税率はどうしたら良い?

【関係する人】お弁当屋さん
【注意点ポイント】会計時

新幹線の中で食べようと思って買ったお弁当や、会議で提供されるお弁当を想像してください。小さな紙のおしぼりがついていたり、お弁当の紙包みの下に割り箸が入っていたり。ここで今食べるのですから、付いていて当たり前。

紙パックのドリンクの裏側にも、ストローが斜めに張り付けてありますね。

割り箸やお手拭き、ストローは飲食料品ではありませんが、あなたが買ったお弁当をここで食べるために必要なものなので、お弁当と割り箸、お手拭き、ストロー全部がセットで軽減税率8%になります。

お弁当屋さん目線で見ると、お弁当は消費税8%で販売し、割り箸の仕入れは標準税率10%。わずかな差ではありますが、消費税の支払いが先行し、資金繰りに悪い影響が出ます。

飲食店と酒屋さんの間でやり取りされる空きびん代 その1

【関係する人】酒屋さん、飲料品卸屋さん、飲食店さん
【注意ポイント】びんの回収代金の扱い

飲食店さんは、酒屋さんからアルコール飲料やソフトドリンクを日々仕入れて、お客さんに提供しています。
翌朝には、生ビールの樽やビール瓶、一升瓶などたくさんの空きびんが積み上がり、この空きびんは酒屋さんが回収して、飲料メーカーに戻され、再利用されます。

空きびんの回収時、酒屋さんから飲食店に空きびん代が支払われることがあります。
この空きびん代の話。

飲み物をびんに入れて販売するときは、びんは当然、飲み物とセットなので(びんがなければ、受け渡しのしようがない)、びんも含めて軽減税率8%です。

ただし、びんが酒屋さんに回収される際のびん代は、飲食料品ではなく、空きびんなので、標準税率10%になります。

この、びん代、仕入金額と比べると少額ですので、今まで気に留めていなかった人が多いと思います。びん代、と言ってお金を受け取ることはあまりなく、たいていは、請求書上で差し引かれて支払いをしているはずです。

今後は、請求書を良く見て、仕入は、軽減税率8%としてびん代を差し引かれる前の総額で計上し、びんの回収代金があれば、回収代を標準税率10%で計上しれなければならなくなります。

飲食店と酒屋さんの間でやり取りされる空きびん代 その2(容器保証金)

【関係する人】酒屋さん、飲料品卸屋さん、飲食店さん
【注意ポイント】びんの回収代金の扱い

その1と同じ、びん代なのですが、飲食店が酒屋さんから飲料を仕入れるときや、酒屋さんがメーカーから仕入れるときに、仕入側がびん代をさきに払っておく、という方法があります。
そして、びんを返却したら、引き換えにびん代を返してもらいます。このびん代のことを、容器保証金というそうです。

この容器保証金は、保証金という名のとおり、販売代金ではなく、びんをちゃんと返しますよ、という前提で預けておくお金。
ですので、消費税がかかる取引ではありません。
というわけで、軽減税率とか標準税率とか関係なく、消費税の対象外です。

もし、びんが割れたり、紛失したりして返せなかったときは、保証金は返してもらえません。返してもらえなかったときの扱いは、びんの販売があったとする方法と、損害賠償金として処理する方法があります。
販売があったとする方法は消費税の課税取引で標準税率10%、損害賠償金とする方法は、消費税の対象外です。
どちらの方法になるかは取り決めによるので、契約書や請求書をしっかり確認する必要があります。

正直言いますと、容器保証金は今まで見たことがありません。

飲食料品の製造が、製造販売か加工賃かの判断に迷うケース

【関係する人】飲食料品の製造販売業者
【注意ポイント】契約の内容

お菓子や飲み物のパッケージを見ると、販売者と製造者の両方が書いてあることがあります。手許にファミリーマートのプライベートブランドのお菓子があるのですが、これも製造者は渋谷食品㈱となっています。
この場合の製造者さんが販売者さんに納品する際の取引の消費税率についてです。

飲食料品の販売に当たるかどうか、は契約の内容によります。
ちなみに
・原材料、包装資材が有償支給である=発注元から買取って加工する
・原材料代、包装資材代に加工賃を加算した金額を発注元に請求する=加工賃の請求ではない
・完成品の引き渡し時に所有権が発注元に移転する

というケースでは、飲食料品の販売として軽減税率8%となります。

一方、コーヒーの生豆の支給を受け、焙煎等の加工を行うケースでは、加工賃として軽減税率の対象とはならず、標準税率10%となります。

今日のまとめ

今日見てきたものは、消費者の立場としては意識しない取引が多いと思います。事業者から国税庁に寄せられた質問に逐一回答するうちに、だんだんマニアックになっているものと思われます。

単に「飲食料品の販売は8%にする」と言っても、消費者に届くまでの飲食料品に関わる事業は膨大で、どれだけ混乱が起こっているのかと、つくづく感じますね。