いまさら聞きづらい電子帳簿保存法の基礎Q&A

あけましておめでとうございます。税理士の石川です。

電子帳簿保存法、、、対応しなければいけないんだけど、国税庁が公表している一問一答やパンフレットを見ても普段の業務に結びつかないというか、言葉が固すぎて、よくわからないんだよな・・・と思っていませんか?

実は、私はちょくちょく思っています。

「電子取引データについては、とりあえず紙に印刷して保存することも許しましょう(許すことを法律上は「宥恕」と言っています)」という取扱いが令和5年12月31日に終わり、令和6年1月1日からデータの保存が必須になります。令和5年のはじめは、今更聞きづらい電子帳簿保存法の基礎から入りましょう。

 

Q1 ECサイトで購入したときの領収書

アマゾンや楽天のECサイトでは、ログインすればいつでも領収書をダウンロードすることができます。わざわざPDF化してパソコンに保存しておく必要はないのでは?


国税庁の一問一答で
「発行者のウェブサイトで領収書等をダウンロードする場合には、PDFによるダウンロード、HTMLによる表示を問わず、ウェブサイト上に領収書を保存する」という方法が認められており、サイトからいつでもダウンロードできるというのは、該当するようにも思われます。だだし、

・ECサイトによってはダウンロードの期限が設けられているかもしれない
・ECサイトの運営側のトラブルで領収書データが消えるかもしれない
・検索条件に合致するか疑問

などのリスクを考えると、パソコンに保存しておいた方がよいと考えられます。

電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問32

【補足2023.7.16】電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問32にあるのは、事業者間取引において発注元が提供しているウェブシステムを想定しているのではないかと考えられます。また、問40には領収書等データがインターネット上で確認できる状態となった場合を「書面が郵便受けに投函された状態」と例えており、その年中にダウンロードを行って要件に従って保存するよう書かれています。したがって、アマゾンや楽天のサイトでいつでも領収書をダウンロードできるというのは郵便受けに領収書が入りっぱなしの状態であって(電子)保存していることにはならない、と考えられます。新しい情報が入り次第、お知らせします。

【補足2023.9.17】週刊税務通信No.3700(令和4年4月18日)P.6-8に情報がありました。
通販サイト上で購入履歴の確認ができれば良いのでは?という議論は、令和4年2月の衆議院財務金融委員会で行われていたそうです。この委員会の会議録と税務通信の記事によりますと、
・通販サイト上で7年間保存・閲覧できれば保存期間の要件はクリアする。この要件をクリアしているサイトは実際にある。
・通販サイト上の購入履歴にて検索要件を満たすサイトは今のところない。
・改ざん防止措置に関し、「通販サイトで購入したときの領収書だから、改ざんできないに決まっている」とは言い切れない。
以上を踏まえて、ダウンロードは必須ではないけれども、納税者が検索機能を満たし、改ざん防止措置のための事務処理規程を定める必要があるとのことです。

通販サイトが閉鎖されるなど購入履歴が閲覧できなくなる可能性も踏まえて、やはり領収書データをダウンロードするのが安全ということも税務通信では触れられています。

Q2 QRコード決済

QRコード決済も電子取引として取り上げられている資料を見ました。QRコード決済は支払方法の一つなのですから、電子取引の範囲に含まれないのではないですか?


「コンビニエンスストアで買い物をして○○payで支払った」ときは、コンビニエンスストアで交付されるレシートや領収書がありますので、電子取引には該当しません。

しかし、インターネット通販での支払い方法として○○payを使った場合は、紙の領収書がありませんので、電子取引に該当します。保存方法としては、決済画面のスクリーンショットを取り、パソコンに送って保存する、などが考えられます。

Q3 データの保存装置の場所

データの保存装置(ハードディスクなど)は事務所内になければなりませんか?
Googleドライブなどのオンラインストレージはどうでしょう?


保存装置が事務所内になければならないわけではありません。
オンラインストレージも認められます。

Q4 電子取引データを会計仕訳に添付する場合

当社が使っている会計ソフトには、仕訳に取引の電子データを添付する機能があります。
これは、電子取引データを保存していることになりますか?


保存していることになります。

検索条件について注意点があります。
日付、金額・・・仕訳入力において必須事項ですから、これらについては問題ありません。
取引先・・・・・会計ソフトの種類や設定によっては取引先は必須の入力項目ではありません。取引先の入力が必須でない場合は取引先を摘要欄に忘れず入力し、取引先で検索できるようにしておいてください。

また、税理士事務所に会計ソフトの入力代行を依頼している場合、税理士事務所のパソコンにしか仕訳データや電子取引のデータがないということでは、会社で保存していることにはなりません。会社のパソコンでも仕訳データや電子取引のデータを閲覧できるようにしておく必要があります。

Q5 タイムスタンプとは?

タイムスタンプは、パソコン上のファイルの更新日時とは違うのですか?
請求年月日とファイルの更新日時が近ければ、ファイルが改ざんされていないという証拠にはならないのですか?


タイムスタンプとは暗号化の技術を使って
・ある時刻にその電子データが存在していたこと
・それ以降改ざんされていないこと
を証明しています。

総務省 国民のための情報セキュリティサイト

タイムスタンプを提供する専門業者さんのサービスを利用する形となります。ファイルの更新日時とは全く違いますので、「更新日時がファイル受領時に近いから」といってファイルが改ざんされていないという証拠にはなりません。

Q6 プリンタの設置

親会社のオフィスに間借りしていて、複合機も使わせてもらっています。
自社専用のプリンタを用意しなければなりませんか?

「レンタルオフィスなので、プリンタは共有」というパターンも同じです。

A
プリンタの所有は必須ではありません。国税庁の一問一答でも
「税務調査等があった時点においてプリンタを常設していない場合であっても、近隣の有料プリンタ等により税務職員の求めに応じて速やかに出力するなどの対応ができれば、プリンタを備え付けているものと取り扱って、差し支えありません」
とされています。

電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問17

 

いかがでしょうか? 疑問点のいくつかは解決できたでしょうか?
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