法人設立前後の「資本金」という名のお金の動きは?

こんにちは。税理士の石川幸恵です。

株式会社をつい先日設立された方からこんな質問がありました。

「会社設立前に司法書士さんから言われて、資本金の額面どおりのお金を個人の通帳から一回引き出して、また同じ通帳に振り込むということをしたのですが、そのお金はこの先どうしたら良いのですか?」

会社設立のハウツー本には意外と書いてないことかもしれません。この、お金を一度引き出して振り込むという動かし方の意味や、法人設立後にこのお金はどうしたら良いのか、について解説したいと思います。

「会社の設立」にあたってやらなければならないこと

「会社の設立」にあたっては、

  • 会社名はなんという名前?
  • 資本金はいくら?
  • 事業年度は?

などを細かく決めなければなりません。これらは会社法に定めがあり、司法書士さんの専門領域です。ということで、会社の設立は司法書士さんにお任せして指示に従っていくことになります。

 

お金を引き出して振り込む意味

(1)株式会社の資本金

株式会社は出資者(設立後の株主)がお金を出しあって作るものです。出しあったお金が資本金となります。設立の際に、「誰がいくら出すか」を取り決めます。

ちなみに、このお金が設立後、当面の会社の運営資金となります。ですから、1円など少額で設立するといきなり運転資金が足りず、社長から借りる必要が出てきます。

 

(2)口座は出資者の個人口座を使う

出資者が出しあったお金を一か所に集めるのですが、会社設立前は当然、その会社名義の銀行口座はありません。作ることもできません。そのため、メインの出資者の個人口座を使うことになります。

 

(3)出資金額を振り込む

複数人がお金を出しあって会社を設立する場合、お金を集めるために代表者の口座に振り込むというのはイメージがつくかもしれませんが、ひとりで設立する場合であってもその人が出資をしたという証拠を作らなければなりません。

そのため、会社設立時の司法書士さんから、

「資本金の額面どおりの金額を一回引き出して、そのまま自分の口座に自分の名前で振り込んでください。そして、振り込んだ記録の出ているページのコピーをください(またはスキャンしてpdfをください)」

という指示がされます。たとえ個人口座の残高が資本金以上あったとしても、この「出し入れ」をすることで、出資者本人が振り込んだという証拠を作る必要があります。

設立後は速やかに銀行口座を開設しよう

会社の設立後、最寄りの金融機関で会社名義の口座を作りましょう。必要書類は金融機関に問い合わせましょう。

 

資本金を振り込もう

法人名義の口座ができたら、個人口座に入れていた資本金をそっくりそのまま振り込みます。

これで、次のような設立時貸借対照表ができます。

※資本金10,000,000円の場合

貸借対照表


現預金 10,000,000 資本金 10,000,000

先にも書きましたが、このお金は当面の会社の運転資金です。ですので、このお金を使って金額が減っても、資本金が10,000,000円であることには変わりはありません。

 

設立時の司法書士報酬と登録免許税は会社負担

会社設立の際に司法書士さんから、設立時の司法書士報酬と登録免許税として、株式会社で30~40万円、合同会社で10万円程度請求されます。おそらく、設立前に出資者の代表が立て替えていると思いますが、設立後、資本金に相当するお金を会社に振り込んだ後に、そのお金から出資者に返しましょう。

勘定科目は「創立費」という科目で処理します。この「創立費」とはちょっと変わった科目で、「費」と付いていますが「通信費」や「備品消耗品費」と違って、費用ではありません。将来に渡って効果が続くものとして資産として扱われます。

費用ではないものの「これを費用化する」という処理をしたときに費用になります。費用化する時期は、設立第1期でも良いですし、2期目以降でも構いません。業績に応じて税理士と決めればよいです。