金融機関にマイナンバーを届け出ていなくても、税務署は個人の預金残高を把握できる

こんにちは。税理士の石川です。

銀行や証券会社から、「マイナンバーの提供のお願い」という書類が送られてきたことはありませんか? 「金融機関にマイナンバーを教えたら、税務署に全財産を把握されちゃうのでは?」と不安になる方もいらっしゃると思います。

さて、金融機関はマイナンバーを何に使うのでしょう?
内閣府と一般社団法人全国銀行協会のパンフレットのQ&Aがわかりやすいので、以下に引用します。

https://www.cao.go.jp/bangouseido/pdf/leaflet_yokin.pdf

Q1 なんで銀行にマイナンバーを届け出る必要があるの?

法令により、銀行には預貯金口座とマイナンバーを紐づけて管理する義務が課せられています。このため、銀行からお客様に対し、マイナンバーの届出のご協力をお願いしています。

Q2 銀行はどんなことにマイナンバーを使うの?

銀行が万が一破たんしたときに預貯金の円滑な払戻しを行うために利用したり、これまでも行われてきた行政機関などの税務調査や生活保護などの資産調査への回答をおこなうためなどに利用します。

Q3 マイナンバーを届け出ると行政機関などに資産を知られてしまうの?

マイナンバーの届出をきっかけに、銀行が行政機関などに預貯金残高などをお知らせすることはありません。

Q1~Q3を総合して考えると、

マイナンバーを届け出たからといって、即、行政機関に口座情報が全て筒抜けになるわけではないが、税務調査などの資産調査には使われる

と考えてよさそうです。

では、マイナンバーを教えなければ、口座情報を隠せるのでしょうか。

行政機関は金融機関に預貯金残高を照会できる

マイナンバー制度とは全く関係なく、はるか昔から、税務調査や資産調査に際しては、行政機関から金融機関に対して調査対象者に係る預貯金等の照会・回答が行われています。

行政機関とは?

国税関係のほか、生活保護に関する機関、捜査機関、地方税や国民健康保険の滞納整理を行う機関などがあります。

どんな情報?

口座の残高、預貯金・融資などの過去の取引履歴などの情報が提供されています。

金融機関×行政機関のデジタル化に向けた取組の方向性とりまとめ

 

金融機関×行政機関のデジタル化 マイナンバーも無縁ではないでしょうけど

行政機関から金融機関への照会は全て紙ベースです。

令和に入ってやっとデジタル化に向けて動き出し、税務署からの照会については、昨年秋にオンライン照会の実証実験、今年、令和3年の秋からは全国への展開が予定されています。

ほかの省庁や地方公共団体も順次デジタル化が検討されています。

このデジタル化、「マイナンバーあってこそ」ではなさそうです。納税者個人とマイナンバー、口座情報とマイナンバーが紐づいていれば照会や回答は早そうですけれども、他に調べる方法はいくらでもありますからね。

マイナンバーを隠しても預貯金は隠せない

マイナンバー制度のない昔から、税務署をはじめとした行政機関は金融機関に照会することが可能だったのですから、金融機関にマイナンバーを届け出ていなくても、いくらでも調べることができます。

金融機関は(我々、税理士もですが)法律上の必要によってマイナンバーをお尋ねしていますので、回答をお願いいたします。

ただし、マイナンバーの取扱いがずさんな相手には教えない方がよいです。例えば、「電子メールで教える」、「普通郵便で送る」ということは通常ありません。