法人の法定実効税率30%超!?そんなに高いのか計算してみた

消費税にうるさい税理士 石川です。

今日は、法人の利益にかかる税金の率について考えてみました。

というのも、確定申告シーズン真っただ中のこの時期、個人事業主の皆さんに、法人設立した方が良いか、個人事業主のままが良いか、検討してみてほしいからです。

1.法人税の税率は○○%です、と一言で言えない

(1)法人に係る税金には種類がたくさんある

税理士に「法人税っていくらなの?」と質問すると、「だいたい○○○○円くらいですかね?」というような曖昧な返事が返ってくるかと思います。

「なぜはっきり言えないのだろう?頼りないなあ」とか思わないでくださいね。

法人税を計算するときは、まず、決算書では経費として計上されていても、法人税の計算では経費として認められないものを調整するという作業があります。

そして、法人の利益に係る税金は種類が多いうえ、利益の額によって税率が段階的に上がったり、税金の計算方法が利益×税率になっているものと法人税額×税率になっているものがあったりと、複雑に絡み合っているのです。

(2)税率

資本金は1,000万円以下、利益が400万円以下という小規模な会社では、次のような税率になります。

埼玉県ふじみ野市、令和元年10月1日以降開始の事業年度について。

課税所得というのは、決算書では経費なのに、法人税の計算では経費として認められないものを調整した後の金額をいいます。決算書の利益とほぼ同じですが、少し違うと考えてください。


課税所得に税率を乗じて計算する税金が法人税と事業税
事業税を基にして計算するのが特別法人事業税(令和元年10月1日以降に開始する事業年度から創設)
法人税に税率を乗じて計算するのが、地方法人税・法人県民税・法人市民税です。

均等割というのは、赤字であっても、定額で必ず支払わなければならないものです。資本金と従業員数によって決まります。70,000円(地方公共団体によってばらつきがあります)が最低なのですが、資本金1,000万円以下かつ従業員数50人以下のうちは、70,000円なので、小規模な法人では、ほとんどの場合70,000円で収まるでしょう。

2.方程式を使って、実効税率を計算する

法定実効税率と世間一般で言われているものは、30%くらいです。これは、税効果会計という会計処理をする際に使われたり、諸外国との税率の差を比較するときに使われたりする税率で、上場企業などを前提とした数字です。

小規模な法人ではそこまで高い税率にはなりません。では、いったい何%くらいなのでしょうか。

1.で税の種類と税率を見ました。法人税額に税率を乗ずる法人県民税や法人市民税があるとはいえ、元をたどれば課税所得に税率を掛けて計算しているのですから、一つの率で表現できるはず。やってみましょう。

χ…課税所得
z…実効税率

χ×zが税金ですね。定額の均等割は税率と関係ないので、省きましょう。

χ×z=①+②+③+④+⑤+⑥-⑦です。

-⑦って何でしょう?

事業税と特別法人事業税は翌期の経費になるため、(事業税+特別法人事業税)×実効税率分、翌期の税金を減少させるので、マイナスします。これも利益と課税所得の違いの一つです。

この方程式、左右にzが出てくるので、左にz、右にχを寄せてχを消すことができます。
結果として、税率z=は次のように表されます。

です。これは、税効果会計なんかのテキストにも書いてあるものです。
上のそれぞれの税率を当てはめると20.52%になります。

これは、課税所得(決算書では経費なのに、法人税の計算では経費として認められないものを調整した後の金額)が400万円以下だった場合の税率です。

課税所得が400万円を超えると超えた部分について事業税の税率が上がります。
課税所得が800万円を超えると超えた部分ついて法人税と事業税の税率が上がります。
法人税額が1,000万円を超えると法人県民税の税率が上がります。

というように、利益が増えるにつれて適用される税率が変わるので、一言で税率を言い表せないのです。

3.法人成りについて

方程式はややこしいですが、法人税の税率は恐れるほど高いものではない、ということだけご理解いただければありがたいです。

ただし、法人を設立するかどうかは、税率だけで判断することはできません。法人を作ったら個人事業主さん本人が社長に就任することになると思いますが、役員報酬をいくらにするか? 社会保険にも入らなければならない、など、検討することが山ほどあります。

細かいことを言えば、本店所在地どこにしようか、社長が今乗っている車はどうしたら良いか、個人事業主としての借借り入れはどうしたら良いのか?などなど。う、頭痛い。

さらに対外的な信用のことも考えなければなりません。

法人を設立する前に専門家に相談してくださいね。