なぜ軽減税率制度のためにレジを替えないといけないのか?

こんにちは。消費税にうるさい税理士 石川です。

今、テレビでこのようなCMが流れています。

「お客様が仕入税額控除を行う場合、税率ごとに合計金額が記載されたレシートの保存が必要です」

これって、かなり難しいことを言っています。税金のプロならわかるけど、というレベル。

何のためにレジを替えないといけないのか、今のままのレジではダメなのか、かみ砕いてみたいと思います。

このCMは誰が見るべき?レジを替えないといけない業種

  • 小売店のうち、飲食料品と飲食料品以外の商品の両方を扱っているお店。
  • お持ち帰りと店内飲食の両方がある飲食店。

このような事業を営んでいる人に向けたCMです。消費者向けのCMではありません。

5%から8%になったときは、税率を変更さえできれば良かったのですが、今回の税率アップは税率が2種類になります。

消費者を対象としてこれらの商売を営んでいるお店は、8%と10%の両方を扱うことになるので、2種類の消費税を扱えるレジでなければなりません。

 

2種類の税率を区別しなければいけない理由は2つある

(お店に来店するお客さんの立場)仕入税額控除

一つは、CMで言っている仕入税額控除。
お客様(ここでいうお客様は、小売店や飲食店に来たお客様のこと)の仕入税額控除のため。
つまり、お店に来たお客さんが困るから、2種類の税率に対応したレジにしないとだめですよ、ということ。

(お店の立場)売上を消費税率ごとに集計

もう一つは、
お店自体の売上を消費税率ごとに集計するため。
消費税率毎に集計できないと、お店自身が困ることになります。

来店したお客さんに関係する仕入税額控除って何?

仕入税額控除というのは、これです。

この仕入税額控除は、お店に来店したお客さんのうち、完全な消費者の立場の人は使えません。

あのテレビCMが言っている「お客様」というのは、ビジネスのために来店した人。
仕事の会食や手土産などでお店を使い、後日、会社で経費精算をしたり、個人事業主さんが自分の消費税の納付税額を計算したりするときに仕入税額控除というものが出てくるのです。

何でもかんでも引き算できるわけではありません。
書類を保存することが必要です。その書類には、税率ごとに合計した税込価額が書いてあること、という条件が付けられています。「税率ごとに合計金額が記載されたレシートの保存が必要です」というのはこの条件のことを言っています。

実務的に、使った経費の消費税率が8%だったのか10%だったのか、レシートに記載されていないと、いくら引けるのかわからないから、税率ごとに合計した税込価額がレシートに書かれていないと困るのです。

お店が消費税率ごとに売り上げを集計できないとなぜ困る?

これは、引き算の前半にかかわります。
商品を売ったり、サービスを提供したときにお客様から預かった消費税がいくらだったのか、一つの税率しか扱えないレジだとわからなくなります。「めんどくさいから全部10%で良いや」と言ったら、納税額が本来より多くなって損しますし、「全部8%で良いや」と言ったら少なくなります。
少ないのは脱税ですからね。

※消費税率ごとに売り上げを集計できない場合には救済措置があり、簡便計算が用意されています。

必ずレジを替えなければいけない、というわけでもない。

レジ補助金があるので、これを機に替えよう、というのも良いと思いますが、工夫次第で何とかなります。

例えば、店内飲食メインで持ち帰りは滅多にない、という場合でしたら、レジは店内飲食だけに使い、持ち帰り分だけ手書きで領収書を書く、ということでも大丈夫。

持ち帰りのための領収書には、税込金額の合計を書くのはもちろんのこと、「軽減税率対象」、そして「8%」をきちんと書きましょう。

領収書をもらった人の立場からするといい加減な領収書をもらったら困るのですが、「軽減税率対象」ということと「8%」を後から書き込むことは認められていますので、書いていない領収書を受け取っても「再発行してください」とお願いする必要はありません。