2019年9月30日か10月1日かで消費税の税率が変わる。取引相手と適用税率で意見が割れたらどうする?

こんにちは。消費税にうるさい税理士 石川です。

消費税の税率は、1997年4月に3%→5%、2014年4月に5%→8%になりました。
税率の変わり目、商売をされている立場の方は、「セールをしよう」と考えたり、消費者の立場でしたら、「税率が上がる前に買い溜めしておこう」と考えると思います。

さて、来る10月1日。9月30日の取引なのか、10月1日の取引なのか、取引先と意見が分かれたら、どうしたら良いと思いますか?

こんなときに、取引の日付がずれる

クライアントに布地の卸売業者さんがいます。夕方、運送屋さんに渡して、荷物が取引先に届くのは翌日。

いつの時点で売上を立てるのか、仕入れる側はいつの時点で仕入を立てるのかというと、基準にいくつかパターンかあります。
出荷したとき(出荷基準)
相手の倉庫に荷物が届いたとき(着荷基準)
相手の検品が終わったとき(検収基準)など。

ただし、原則、お金をもらったときというのはありませんからね。

どの基準にするのかは、自分が営む事業がどんなものか、というのに合わせて選んでいるはずです。
ちなみにこの布地の卸売業さんは「出荷基準」にしています。トラックに載せて商品が出て行った日に売上にします。

受注生産の機械のようなものだったら、相手から「注文通りにできあがっています」とお墨付きをもらったとき(検収基準)に売上にするのが自然でしょうね。手直しが発生している間は、請求書、出せませんものね。

布地の卸売業者さんは、出荷時点で売上にしているのですが、相手は翌日、受け取った時(着荷基準)か、長さや品質をチェックして注文通りと確認できたとき(検収基準)に仕入と考えると思います。
ここで1日ズレが出ます。

売り手に合わせるのが基本

請求書を作って「商品代金いくらください」というのは売り手ですからねえ。

布地の卸売業者さんは、9月30日に出荷した布地の請求書を消費税率8%で作成するはずです。
買い手は「うちの入荷は10月1日なんだけどな~」と思っていても、売り手の請求書に従って支払い、そして消費税率「8%」の商品を仕入れた、と処理しましょう。

ただし、話し合いをして、10%とするのも、もちろん可能です。

区分記載請求書の請求額を手直するのは不可

買い手が「税率は10%!」と高い方を主張することは、普通、考えにくいのですが、買い手のシステムの都合で、売り手が9月30日に出荷したものを、買い手に合わせて10%にすることも実際にはあり得るようです。過去の税率アップの際にもあったそうです。

さて、8%で一度作ってしまった請求書、どうしましょうか?
「こっちも請求書控えを手書きで直しておくから、そちらもちゃちゃっと直しといて~」というのは×。

10月1日以降、請求書には、「飲食料品かそうでないか」、「税率ごとに合計した税込対価の額」を必ず書かなければならなくなります。
これを区分記載請求書と言います。「飲食料品かそうでないか、きちんとわかる請求書でなければなりませんよ」というルールです。

ただし、飲食料品かそうでないか、それぞれの税込対価が書いていない場合、請求書を作り直してもらわなければならないか、というとそこまでは求められておらず、請求書を受け取った人が書き足してもよいとされています。

書き足しても良いなら、直してもらうのも良さそうですよねえ?
でもダメなのです。書き足して良いのは、「飲食料品かそうでないか」と「税率ごとに合計した税込対価の額」だけ。
8%として作成された請求書を、買い手側で税率を10%に直したり、税込対価を直したりするのは、ダメ。売り手が請求書を作成し直すなどが必要です。

参考 週刊税務通信 No.3559