租税教室の課外授業2 税金を使い切れなかったらどうするのですか?

こんにちは。消費税にうるさい税理士 石川です。

先日の小学校での租税教室で「集めた税金をその年に使い切れなかったらどうするのですか」という質問を受けました。

「予算消化のために、必要性の薄い工事をやって使い切っている」というのでは、あまりにも俗っぽいし、本当にそうなのか怪しい。

補正予算というのも気になります。実は、昨年「事業のIT化に取り組んだら、IT導入補助金を出しますよ」という募集がありました。このIT導入補助金、補正予算なのです。
この補助金、会計ソフトの導入もその補助金の対象で、直近のものでは最大で新規導入コストの1/2(50万円が限度)が補助されます(都度、補助率や補助額は変わります。現在、受け付けは終了しています)。その三次受付の締め切りが平成30年12月だったのですが、なんとこれ、補正予算の中でも平成29年度分なのですよ。補正予算って、いったい何なの?

小学校には回答を郵送したのですが、少しアレンジしてコラムにも載せたいと思います。

国に入って来るお金と使いみち

1年間に日本でお金をどう使うかは、その年度が始まる前に、国会で決めています。
(小学校の租税教室では、子どもたちにわかりやすいように、「予算」ではなく、「使いみち」という言葉を使っています。以下、「使いみち」という言葉が出てきますが、予算のことです)
平成30年の1年間に使うお金の使いみちは、全部で97兆円でした。
日本の国税の税収59兆円。明らかに足りていません。足りない分は公債金という借金をしています。
このことから、「集まった税金は、余らないのだなあ」という結論になりますね。

会計年度独立の原則

では、お金の使いみちについてもう少し掘り下げてみましょう。
税金と国の借金を合わせたお金は、使いみちを一度決めたら、その年度中に使い切るのが原則です。これを会計年度独立の原則といいます。

繰越もあるよ

ただし、日本は今、とても災害が増えています。「地震や大きな台風が来た」などの理由で、「道路を計画どおりに作れなかった」ということも起こるかもしれません。このように、国会で決めた使いみちどおりに使い切れないこともあります。
使い切れなかったときのために特別な制度があって、翌年度にまたがって使うこともできるようになっています。
これを繰越制度といいます。

例えば、東日本大震災の復興のためのお金は、復興をどう進めるか、市町村と話し合うのに時間がかかったため、年度中に全部使い切ることが難しくなり、繰り越されました。

補正予算

国会で使いみちを決めたものの、その後に災害が起きたり政策の変更があったりして、当初の使いみちを変えるものです。事業の性質上、その年度では終わらせられないものであれば、この繰越の制度を使うようです。

調べてみての感想

使いみちの中には予備費というものがあるのですが、補正予算はこの予備費が充てられたりします。足りなければさらに借金を増やすこともあります。

災害も起こらず、景気も安定していて本当に何の使いみちもなくて、予備費が余る、なんてことはあるのかな?
質問の本当の意図はそこだったのかもしれないので、ちょっとはぐらかしちゃったかもしれません。

税金が余って、国の借金を早く返せたら、子どもたちに明るい未来を引き継げるし、さらに借金がなくなったら今より税率が下げられる。海外から企業が集まってくるかもしれませんね。