下請けの仕事から生まれた発明は誰のものなのでしょうか?

消費税にうるさい税理士 石川です。今日も知的財産についてです。

昨日の「下町ロケット」。
佃社長(阿部寛さん)に対して帝国重工の奥沢部長(福澤朗さん)が「下請けさんはこちらの指示に従えと言ってるんです」って・・・。
誰か福澤朗さんをぶっ飛ばしてくれないかな、と思いましたね。

「こんな露骨な下請けいじめはあり得ないよ」、「日ごろ、得意先とは良好な関係を保っているよ」と思われる経営者の方も多いと思います。
が、良好な関係の中、簡単な口約束で、本来、自社が得られるはずの利益を大企業に取られてしまっているかもしれませんよ。
知的財産ってそういう側面があるな、と感じたことがあります。知っているか知らないかだけの差で・・・。

私は知的財産の専門家ではないですので、以下は、知的財産権に関する問題の解決策ではありません。
が、税理士の業務の中で、小さい規模の会社の経営者さんと日ごろから事業のことをざっくばらんにお話しする時間は多く、その中から問題提起をしたいと思って書きます。

知的財産権について小規模企業の経営者の方の意識は?

何年も前、まだ税理士になっていなくて、某会計事務所のスタッフだったときのことです。
新聞で、ある食品の製造方法に関する特許の揉め事の記事を見つけました。同じ食品の、製造機械の部品を製作するクライアントさんがおり、社長に記事を見せました。
その会社は、決まった部品を受注した数量作ることの繰り返し、というわけではなく、受注は常に一点もの。
「得意先からの要望を、どうやったら実現できるか、みんなで知恵を出しあって、試行錯誤している」そうです。
従業員数人の規模の製造業だと、量産ではないところ、多いですよね。
会計事務所のスタッフである私にも機械の絵を描いて、どこがどう難しいのか、いつも、一生懸命、説明してくださっていました。

常に考えて試して、としているからこそ、「うちも特許申請、必要かな?」と考えてもらうきっかけになれば、と思ったのです。

ところが、「うちだってそういうレベルのアイデアはあるよ。お得意さんから『これについては、(権利、放棄で)良いよね?』と言われるよ」と胸を張っておっしゃいました。

その特許レベルの発明、その後、どうなったのでしょう。「(放棄で)良いよね」ということは、つまり、得意先が特許申請したのかな、と想像してしまいますよね。

技術は誰のもの

特許を受ける権利は、発明をした本人にあります。
権利は譲ることもできますから、得意先が特許申請しても、多分、違法ではないでしょう。

でも、口約束で、しかも発明が完成した後に「放棄してね」、という一言で片づられてしまって良いのでしょうかね?
権利を譲るのだから、受注品の売上のほかに、発明に対する正式な評価=対価、を交渉しても良いのではないでしょうか。

そもそも得意先との取引するにあたっての基本契約、どうなっているのでしょう?
受発注の中で生まれた特許はどちらのものなのか、知的財産に関する条項ってあるはずですよ。
「発明は無条件で発注元のもの」というような規定だったら、独占禁止法違反かもしれません。
(そんな露骨な規定はないかな~)

契約書がない場合も多いのではないでしょうか?「下請けの立場からは、言えないよ~」と。

知識の装備や専門家のサポート、必要ではないですか?

【おまけ】製造業の展示会の参加

その社長に、「製造業の展示会に足を運んでみては?」とおすすめしたこともあります。
新たな取引のきっかけができたらいいな、と思ったからです。

ところが、「そんなところに行ったことが得意先に知られたら、『あいつは技術上の秘密を売りに行った』って思われるかもしれない。絶対ダメダメ」と拒否されました。

小規模な会社は得意先に気を遣うのが当然なのかもしれません。
が、これからの時代もこのような対応で良いのでしょうか。

あなたの意識はどうですか?