小さい規模の会社経営にも知的財産の知識が必要

こんにちは。消費税にうるさい税理士 石川です。

なぜ税理士ブログなのに、知的財産?と思われることでしょう。
実は、私自身が「知らないとまずいな」と勉強の必要に迫られたからです。

池井戸潤さんの「下町ロケット」。
今、ドラマやっていますよね。
前回のシリーズでも今回のシリーズでも、特許権が頻繁にキーワードになっています。
町工場だって、特許とは無縁でいられません。

ドラマから影響を受けただけではありません。
1年ほど前、ある企業のエレベータホールで、エレベータが来るまでほんの少し立ち話をしていました。その中で「知財ビジネス」とか「知財を管理してくれる会社」という言葉を耳にしました。
実は私、「会計上、特許権は無形固定資産」ということと「知財は理系に関係が深い」くらいの知識しかありませんでした。
もちろん、ググれば、償却期間が8年、くらいのことはすぐ出てきます。
が、知財でビジネス?イコール儲かる?管理????何をするのやらさっぱりわかりません。
税理士たるもの、ビジネスが成り立つ仕組みがわからないではお天道様に顔向けできない。
まして私は理系出身。知らないままではいられない、と勉強してみることにしたのです。

知的財産権制度説明会を受講する

大学の時の先輩で、たまたま、知的財産に関する仕事をしている方がいます。
なにか良い入門の本はありませんか、と相談したところ、「特許庁のホームページに知的財産権制度説明会(初心者向け)テキストという資料があるから、参考にしてみては?」とアドバイスいただきました。知財全般が書かれている無料の優秀な資料、とのことでしたが、優秀すぎて、ページ数がすごかった…。

全然読み進まず、じゃあ、「知的財産権制度説明会2018(初心者向け)に出てみよう!」と考えたのでした。
この説明会は、毎年、全国47都道府県で各県最低1回以上、開催されています(今年度は全部終了)。参加費は無料。
主催者の中に特許庁も入っていますから、あやしいものではありません。
対象は、主に企業の知的財産部に配属された方などのようです。

私は9月26日のメルパルク東京の説明会に出席しました。1,000人規模の会場が結構埋まっていて、やはり、関心度が高いのだなあと感じました。
時間は、午後13:00~16:30の3時間半です。

特許庁のホームページで見たテキストも、きちんと製本された状態でゲットできました。テキストの内容に応じたレジュメや特許庁のホームページにある動画なども使って、特許、実用新案権、意匠、商標、不正競争防止法について一通り説明を聞くことができました。

サントリーのいろはすのボトルは意匠登録されているとか、久光~♪のメロディは商標登録されているなど、具体的な企業名や商品名が例示され、興味津々でした。会場の設備が古いせいで、お尻がちょっと痛かったですけどね。

知的財産管理技能検定を受ける

ふむふむと説明会を聞いてきましたが、身についた気がしない…。

説明会でもらったたくさんの書類の中に、知的財産管理技能検定のパンフレットがありました。ちょうど、次の平成30年11月18日の試験の申込期間中でした。知的財産を専門にするわけでもないのに試験なんて受けても…という気もしましたが、インプットアウトプットしないと身につかないという自分の性格と、世の中の知的財産の注目度は今後下がることはないと考えて、受けてみることにしました。

知的財産管理技能検定のホームページを見れば、「知的財産管理技能検定とは」ということが書いてありますが、私なりの要約をしますと
「企業の知的財産管理部の方の知識の程度を測る検定」
ということです。
企業の知的財産管理部の方向け、とはいうものの、受験資格は「これから知的財産に関する業務に従事しているか、しようとしている者」。
要するに誰でも受けることができます。
申込は、http://www.kentei-info-ip-edu.org/exam/exam_gaiyo.htmlから。
顔写真や本人確認書類の提出までホームページから行えます。受験料はクレジットカード決済。知的財産権の試験だけあって、なんだかハイテク。願書に顔写真と受験料分の印紙を貼り、国税局まで出向いた税理士試験と違います。税理士試験も今では対面の受付はなくなったようですが。

試験対策

学科試験と実技試験があります。実技って、面接?と思ったのですが、筆記でした。学科試験はマークシート、実技試験は一応記述ですが、選択肢が用意されているので、語句を正確に暗記したり、文章をまとめたりする必要はありません。どちらも30問ずつ、45分間です。

合格ラインは70パーセント。合格率は50パーセントです。受験者数は1~3級合わせて、1回の試験に10,000人くらいのようです。

学科試験も実技試験もそれほど違いはありません。が、実技試験の方は、「知的財産部員と営業部員の会話で正しいものを選べ」とか、「問題文は正しいか正しくないかを○×で答えなさい」と「なぜそう考えたか、理由を回答群から選びなさい」というような問題があります。

学科試験でも実技試験でも問題は適切なものを選べ、と不適切なものを選べ、がありますので、問題をよく読まないとひっかかります。

過去問から少しシチュエーションを変えただけの問題もありますので、過去問を解くのは有効です。テキストを一通り読んで、問題集を2、3回、プラス過去問(これはサイトからダウンロードできます)をやりました。

試験

受験票もサイトからダウンロードして印刷。会場は国士舘大学でした。集合時間は11:00。解答用紙に名前が印字してあるのもまた税理士試験と違ってハイテク。
時間は足りないことはありませんが、まあまあかかります。1、2回見直しする時間が残ります。
結構若い受検者が多く、就職活動の箔付けですかね。

試験当日のうちに、テキストを出版しているアップロード社のホームページに解答速報が出ていました。自己採点では多分、合格できていると思いますが、発表は年明けの1月初旬です。

私が目指すポジション

知的財産管理技能検定の3級を受けましたが、2級は受けるつもりはありません。

3級のレベルは、「大企業においては、知的財産管理部の上司の指導の下で、中小・ベンチャー企業においては外部専門家等と連携して、課題を解決することができる技能及びこれに関する初歩的な知識の程度」だそうです。
私が目指すポジションは、まさにこの「外部専門家等」つまりは弁理士さんや弁護士さんと連携して、クライアントの知的財産に関する課題を解決するポジションです。

小さい規模の会社ですと、会社の中に、簿記の知識のある経理担当者もいない、ということがよくあります。知的財産の管理も同様ではないでしょうか。クライアントが、知的財産について後手に回って、不利になることのないよう、お役に立ちたいと思います。

というわけで、これからもときどき、知的財産の記事をアップしていきます。

参考
知的財産管理技能検定3級テキスト[改訂9版] 知的財産教育協会 編
知的財産管理技能検定3級 厳選過去問題集[改訂9版]知的財産教育協会 編
特許庁のパンフレット