決算書と総勘定元帳を電子データで保存しませんか?

こんにちは。税理士の石川です。

来期から、帳簿書類を電子データで保存して、令和っぽい経理にしましょうよ。

決算書、総勘定元帳、仕訳帳の保存方法

(1)会社にはデータがたくさん貯まっている

日々の事業活動を通して、会社にはたくさんのデータが貯まっていると思います。

例えば…

見積書、注文書、注文請書、図面(建設や製造業)、カルテ(お医者さん)、顧客名簿、納品書、請求書、パンフレット、飲みに行ったレシート、パスモにチャージした領収書、現金出納帳、取引先別の台帳、決算書、総勘定元帳etc

お客さんや従業員との日々のメールのやり取りも記録として保存しておこうと思うことは多いですよね。

これらは、印刷物としてファイリングしたり、あるいはpdfやエクセルのファイルとしてパソコン内に保存していたりするでしょう。

どれも重要な書類なのですが、今回取り上げたいのは、会計や税務の書類。中でも、

決算書、総勘定元帳、仕訳帳

です。いずれも自分で(というか税理士事務所に依頼して)コンピュータを使用して作成する帳簿で、税務調査を受けるときに必須の書類です。

(このうち、仕訳帳の出番はあまりないかな…)

しかも自分では滅多に見ないのに、枚数が多くてやたらと場所を取る書類です。

 

(2)決算書、総勘定元帳、仕訳帳の保存方法

決算書、総勘定元帳、仕訳帳の保存方法は法律で決まっています。

  1. 出力した紙
  2. オリジナルの電子データか電子計算機出力マイクロフィルム(COM)

の二択です。

気を付けてほしいのは、

「入力した会計ソフトのデータは過年度の分もいつでも見られるから大丈夫でしょ」…NG

総勘定元帳をpdfファイルにして保存している…NG

総勘定元帳は調査の連絡があったら印刷する…NG

ということです。

電子データで保存するには

帳簿や書類は紙に印刷して保存するのが原則であり、上で見た「オリジナルの電子データか電子計算機出力マイクロフィルム(COM)」で保存するためには、保存要件を満たすことと税務署長の承認を受けることが必要とされています。

保存要件と承認、それぞれ見ていきましょう。

(1)保存要件

①保存要件の概要

  • 記録事項について、訂正、削除、追加したという事実やどんな訂正をしたかを確認できるソフトウェアであること
  • 電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において相互にその関連性を確認できること
  • 会計ソフトの概要やシステム仕様書、操作説明書を備え付けること
  • ディスプレイやプリンタなど閲覧するための装置を備え付けること
  • 二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること

などなどあります。詳細はこちら↓

電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】問7

使用している会計ソフトが果たしてこれらを満たしているか、どんなレベルであれば満たしていると言えるのか、コンピュータシステムの専門家でなければ、確認するのは困難だと思います。
だからと言って、「結局、電子データで保存なんて無理じゃん?」とあきらめることはありません。JIIMA認証のソフトウェアがあります。

 

②JIIMA認証のソフトウェア

JIIMAというのは、公益財団法人日本文書情報マネジメント協会のことです。ここが認証するソフトウェアは、①保存要件をクリアしているというお墨付きのソフトウェアです。お墨付きですから、次に説明する(2)税務署長の承認をうけるための申請書の記載事項が簡素になっており、申請書に添付して提出すべき書類も少なくて済みます。

 

(2)税務署長の承認

承認を受けるためには申請書を提出します。
JIIMA認証のソフトウェアかどうかで申請方法や添付すべき書類が少し変わりますので、当事務所で行っている申請について解説します。

提出するのは、

①国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等の承認申請書
(市販のソフトウェアのうちJIIMAの認証を受けているもの)←()書きもちゃんとついています

②電子計算機処理に関する事務手続きの概要を明らかにした書類(①の添付書類として提出します)

です。

①は使用している会計ソフトやパソコン、プリンタのメーカー名、機種名などを書きます。ちょっと不思議ですが、数年後にソフトがバージョンアップしたり、パソコンやプリンタを買い替えても、申請し直す必要はありません。
②については、当事務所との間で電子帳簿作成に関する委託契約を結んでいただき、契約書の写しを添付します。もう一つ、会社内で電子帳簿事務取扱規程を定めてもらい、これの写しも添付します。規程は、雛形がありますから、会社の実情に合わせてアレンジすれば大丈夫です。

 

(3)新事業年度から適用するためには、いつまでに届け出を出せばよい?

申請には期限があります。いつまでに出せばいつから適用、という感じなので、締めみたいなものです。電子データによる保存を開始しようとする日の3か月前に申請を出すことになっています。

原則として、事業年度の中途から切り替えることができませんので、事業年度開始の3ヶ月前までに申請しましょう。3か月前に間に合わなければ、開始を翌々期からにすればよいのです。

 

当事務所の推奨会計ソフト

株式会社TKCのソフトを推奨しています。もちろんJIIMA認証のソフトウェアです。

以下、私の会計ソフトに対する考え方です

この仕事を始めたばかりの頃は、ソフトを指定するのではなく、お客様が使用するソフトそれぞれに対応したいと思った時期もあります。
会計ソフトは「仕訳のインプット」と「仕訳帳・総勘定元帳・試算表のアウトプット」が基本機能ですから、税理士や税理士事務所の職員でしたら、なんとなく他社ソフトも使えなくはないというのが実情だからです。

が、「なんとなく使える」程度でしか知らないソフトが電子帳簿保存法に対応しているか調べるのは前述のとおり、結構、難しいです。さらに言えば、そのソフトが他社ソフトにはない画期的な機能を持っていたとしても、「なんとなく使える」程度では活かすことができません。

一人の人間が精通できる会計ソフトはそう多くはないだろう、と考えるに至り、原則としてTKC社のソフトに限定しています。

私の思うところのTKC社の会計ソフトの長所短所は以下のとおりです。

長所

歴史の長い会計ソフトウェアなので、システム的な意味で枯れており、安定性・信頼性が高いです。
TKC社から税理士へのサポートがあります。
ユーザー向けのサポートデスクもあります。AIやチャットではなく、人が電話対応してくれるので、安心です。

短所

3か月前、4ヶ月前など過去の領収書やレシートを後から出したり、経費に計上したものの決算時に赤字になりそうだからやっぱり経費に入れるのをやめると考えを変えたり、などの修正が困難です。経営とプライベートの区別をつけて日々記帳していれば問題ないのですがね。砕けた言い方をすれば「クソまじめさ」を求める会計ソフトです。