こんにちは。税理士の石川です。
「今日は取引先の社長と飲みに行くから、少しお金を下ろしておくか…。駅前の○○はクレジットカード使えないけど、美味しいからなあ」。
こんな感じで、会社の銀行口座からお金を下ろして自分のお財布に入れておくこと、ありませんか?
お金を下すことがアウト、というわけではありません。でも、きちんと管理しないと、後々大変なことになりますよ。
決算書の現金勘定を見れば、今、会社にあるべき現金の額がわかります。
実際のお金の残金と一致していますか?
多すぎる場合
「『貸借対照表の現金の額が100万円になっていますが? 実際の額と合っていますか』と税理士から言われた。そんなにあるわけない。どうしてそんなことになっているんだ?」。
原因はいくつか考えられます。
発生原因
領収書の紛失や使い込み
- 取引先の社長と飲みに行って、領収書をもらったけど失くしてしまった。まあ、いっか。
- 会社のお金を自分のお財布に入れて、いつの間にか個人的なことに使ってしまった。
こんなことを繰り返し、積もり積もって100万円。珍しくないですよ。
袖の下など領収書をもらえない場合
建設関係でたまに聞く話です。
「現場監督にお金を渡さないと次の仕事を回してもらえないから…」。
力関係で、断れないのでしょうね。
領収書をもらえるなら良いですが、通常はもらえないでしょう。
取引先や部下と飲みに行った帰りにタクシー代を渡したり、自分は参加しない二次会代としてお金を渡すこともあるでしょう。これらも後で領収書をもらうことはおそらく困難でしょう。
なお、引越し業者さんやイベントの司会者さんにご祝儀やチップとして渡したものは、常識的な範囲であれば、出金伝票に金額、渡した相手、内容を書き残すことで、経費にすることは可能です。
ちなみに、現場監督は、1年間にもらったお金や商品券が総額20万円を超える場合、確定申告しないと申告漏れになります。それ以前に社内のコンプライアンス的にかなり問題だと思いますが、その辺り、どうなんでしょうね。
現金勘定が異様に多いと何が問題?
粉飾を疑われる?
現金を引き出して支払をしたが、仕入や経費に計上しないことで利益を多く見せかけることができてしまいます。
異様に多い現金残高は、金融機関の方にどう思われるのでしょう?
税務調査で疑念を持たれる?
本当は社長が使い込んだのでは?と思われないとも限りません(指摘されたことはまだありません)。最悪の場合、役員賞与として所得税がかかります。
「決算のときに、過剰な現金は役員賞与として処理しておいてよ」というわけにはいきません。法人税法上、役員賞与は原則、経費になりません。
発生させない方法
領収書を失くさない、会社のお財布と自分のお財布を区別する、というのは耳タコだと思います。
問題は、領収書をもらえない支払いをどうするかですが…。
商品券を受け取ってもらうか(商品券を買ったときの領収書のほか、必ず、誰にいくら渡したか書き残してください)、社長の役員報酬を増やして、その中から支払うしか経費とする方法はありません。役員報酬を増やすことで源泉所得税と社会保険料の負担が増えますが、領収書をもらえないようなお金の渡し方を続けるのならば、仕方のないことです。
すでに積もり積もった現金残高を解消するには?
返す
返済時期については、ある程度調整可能ですが、毎年利息を計上しなければなりません。利息は会社の利益ですから、法人税がかかります。
役員報酬と相殺していく
役員報酬と相殺して少しずつ返す、と言う方法を提案したことがありますが、受け入れられたことはありません。所得税、社会保険料を負担しなければいけないからでしょうね。
次回、少なすぎる場合(現金残高がマイナス)について見ていきます。