税理士の立場から、お客様の会社の財産「営業秘密」に対してどんな助言ができるか、勉強して来ました

こんにちは。消費税にうるさい税理士 石川です。今日もちょっと税理士業の周辺について書きます。

会社の秘密まもれていますか?~秘密情報を守り、活かすために~

というセミナーを受講しました。このセミナーは、関東経済産業局や埼玉県などの共催、特許庁が後援して開かれたものです。

特許権や意匠権など登録して公開するものの対極の営業秘密。秘密にしてくべきものですが、営業秘密も知的財産の一つです。
税理士は知的財産の専門家ではありませんが、売上や仕入、取引先の新規拡大、従業員の入れ替わりなど日頃の会社の動きを最も早く知れる立場として、営業秘密について知っておくべきことを勉強して来ました。

知的財産権の中での営業秘密の位置づけ

営業秘密と対極にあるのが特許権や意匠権など権利取得するものです。
手元に、レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?(新井信昭著、新潮社)という本があるのですが、このタイトルにあるとおり、伊右衛門のレシピは公開されていて誰でも見ることができます。
特許を申請すると中身が公開されるということと、特許権には期限があり、期限が切れると特許権使用料など払わず特許技術を使った商品を販売できる、というところがポイントですね。

逆にコカ・コーラの原液レシピは、特許を取っていません。1886年、日本はやっと明治になったころに開発されましたが、今でも営業秘密として守られています。レシピを知っているのは2人とか?工程を何ヶ所かの工場に分けており、全体がわかる人はほとんどいないんだとか?
特許を取らなければ、非公開で永久に誰にもマネされず自社の独自技術とできるわけですから、内容によっては営業秘密とした方が良いのです。その代わり、絶対に秘密を流出させない管理が必要になります。

コカ・コーラレシピのような世界中の誰もが気になる営業秘密のほかにも、どんな業種の会社にも必ず秘密として守るべき大事な情報があります。例えば、顧客情報、仕入先情報、見積もりなどの販売情報、研究開発の失敗データも秘密として守るべき会社の大事な情報です。

こんなときにも営業秘密に気を配る~従業員の入社、退職~

得意先から、図面を要求されたりとか、商談でつい技術を披露しすぎた、などで技術情報が漏れてしまう、ということがあります。また、従業員の入社、退職時にも注意すべきことがあります。

お悩み1 従業員から退職の申し出があり、転職先は競合他社。
競業避止義務契約を結ぶという手もありますが、憲法の職業選択の自由に反するので、あまり有効ではありません。
ただし、①期間を1年程度に限定、②地域を限定、③職種の範囲を限定、④就業中には十分な報酬を出していて、退職を申し出たら競業避止義務を課されても納得できるくらいであった、という要件を満たしていると認められるようです。

お悩み2 転職者を受け入れて新製品を開発したら秘密情報の侵害だと訴えられた
面接時に転職元と秘密保持契約、競業避止義務を負っているか確認し、話した内容を議事録に残しましょう。
入社後は、いきなり同じ仕事をやらせる、ということは疑われるので避ける、前職の情報は持ち込みません、という書面をもらって保存するなどの対策があるそうです。

小規模な企業の経営者さんにとって、従業員に「やめたい」と言われることはショックでしょうし、先々も信用していたい、という気持ちもあるでしょうが、冷静な対策が必要です。

法律による保護

営業秘密は、不正競争防止法により保護されています。
民事的な保護と刑事罰もあります。
民事的な保護としては、差止請求とか損害賠償請求ができます。刑事罰は10年以下の懲役または2000万円以下の罰金(又はその両方)をかすこととされています。
大企業だけが関係する話ではありません。従業員10名の電子部品製造機械業者で、図面の電子データを退職者が持ち出し、5000万円の損害賠償をされた裁判例もあるそうです(判決は4100万円)。

法律があっても日ごろからきちんと管理していないと、訴えは認められない

次の3要件を満たしていないと、法律的な保護を受けられません。
・従業員が管理状態を見たときに、会社が秘密として管理しているんだな、と認識できること
・事業活動にとって有用な情報であること。脱税等の反社会的な行為の秘密はダメ
・一般に知られていないこと
「そもそも秘密として管理していないでしょ」、「従業員の誰もそれを会社の秘密だと思っていなかったでしょ」という状態はNGということです。

何が秘密か、どう保護するかを決めて、対策としてUSBメモリの持ち込み禁止、工場の写真撮影禁止、データベースはID、パスワードで管理、文書は鍵のかかるキャビネットに入れるなど日ごろの行動がやはりまず大事ということですね。