ここがわかりづらいゾ 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】

こんにちは。システムエンジニア経験者の税理士 石川幸恵です。

令和6年1月1日以降に電子データでやり取りした請求書や領収書はデータのまま保存しなければなりません。これは、上場企業から個人事業者まで、ほぼすべての事業者が対象です。しかも、ただ保存してあれば良い、というわけではなく、保存方法に決まりがあります。今日は、電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】について、疑問点をまとめてみました。

 

「ダウンロードの求めに応じることができる」とは?

電子帳簿保存法に関する説明には、「税務職員からのダウンロードの求めに応じることができる」という言い回しが頻繁に出てきます(問16、18、22、42、43、44、48、53など)。ダウンロードの求めに応じることができる状態とはどのような状態なのでしょうか?

一問一答問53で「ダウンロードの求め」についてカッコ書きで「電磁的記録の提示・提出の要求」という説明が加えられています。これでも専門用語っぽくてわかりづらいですね。もっと納税者に寄り添った表現が国税庁のパンフレット「電子帳簿保存法の内容が改正されました」にありました。そのパンプレットによれば「ダウンロードの求め」とは「調査担当者にデータにコピーを提供すること」ということです。

ということは、パソコンなどに保存したデータをUSBメモリなどにコピーして渡すことができればよさそうですね。

一方で、「税務調査の際にサイトにログインして、該当の取引の領収書をダウンロードすれば良い」ということではないと考えられますので、ご注意ください。

 

ウェブサイトに領収書等を保存?

問32は電子メールでやり取りした場合、領収書をウェブサイトからダウンロードする場合、HTML形式で表示される場合など各種の電子取引についてどのように保存したら良いのか具体的な方法が示されています。その中で、

2 発行者のウェブサイトで領収書等をダウンロードする場合
(1)PDF等をダウンロードできる場合
①ウェブサイトに領収書等を保存する。
②ウェブサイトから領収書等をダウンロードしてサーバ等に保存する。

という部分があります。

②はわかります。ダウンロードですよね。が、私のIT知識が足りないのかもしれませんが、①がよくわかりません。いつでもダウンロードできる状態を「保存」と捉えてよいのでしょうか?

ダウンロードできる状態を「保存」と捉えるのは問題があると思われます。と言いますのも、問40に「領収書等データがインターネット上で確認できる状態となった場合について、郵送された書面が自身の郵便受けに投函された状態と同視できる」とされておりまして、ダウンロードできる状態なのにしないままということは、郵便受けに入れっぱなしで保存していない状態と考えられるためです。

「発行者のウェブサイト」から別のファイル保存用のウェブサイトに移すという意味でしょうか? それならばウェブサイトではなく「クラウド上のファイル管理システム」みたいな言い方にしてほしい気もします。

「ウェブサイトに領収書等を保存する」とはどういうことなのか、続報を待ちたいと思います。

【補足2023.9.17】週刊税務通信No.3700(令和4年4月18日)P.6-8に通販サイトで購入したときの領収書ダウンロードについて情報がありました(1年以上前にすでに公開されていた情報でした。お詫びします。)
通販サイト上で購入履歴の確認ができれば良いのでは?という議論が、令和4年2月の衆議院財務金融委員会で行われていたそうです。この委員会の会議録と税務通信の記事によりますと、
・通販サイト上で7年間保存・閲覧できれば保存期間の要件はクリアする。この要件をクリアしているサイトは実際にある。
・通販サイト上の購入履歴にて検索要件を満たすサイトは今のところない。
・改ざん防止措置に関し、「通販サイトで購入したときの領収書だから、改ざんできないに決まっている」とは言い切れない。
以上を踏まえて、ダウンロードは必須ではないけれども、納税者が検索機能を満たし、改ざん防止措置のための事務処理規程を定める必要があるとのことです。
①の「ウェブサイトに領収書等を保存する」というのは、この「通販サイトで購入履歴の確認ができる」という状態を指すのかもしれません。

電子メール本文に取引情報が記載されている場合

電子メール本文に取引情報が記載されている場合の保存の仕方は問3、問32、問47で触れられています。要するに、PDFファイル形式に変換して保存しようということです。

電子メールは各種メールソフトの受信トレイから1通だけをドラッグアンドドロップで引引っ張りだすことで、.emlという拡張子の1通だけのファイルを作ることができます。この方が元データそのものという感じですが、受信トレイから引っ張り出すというのはややマニアックですかね。

 

「アプリ」の意味

一問一答には「スマホアプリ」、「アプリ」という言葉がしばしば出てきます(問4、7、32など)。これが、アマゾンや楽天などのショッピングサイトのアプリを指しているのか、QRコード決済アプリを指しているのか、疑問です。

以前、「コンビニなどの実店舗で、交通系ICにより買い物をするのは、電子取引に当たらない」と書きました。コンビニでは紙のレシートや領収書がもらえるので、コンビニとお客さんとの取引は電子取引に当たらないということで良いと思いますが、QRコード決済事業者とお客さんとの取引は電子取引に該当するかもしれません。