電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】を読んでみよう【基本的事項】

こんにちは。システムエンジニア経験者の税理士 石川幸恵です。

令和6年1月1日以降に電子データでやり取りした請求書や領収書はデータのまま保存しなければなりません。これは、上場企業から個人事業者まで、ほぼすべての事業者が対象です。しかも、ただ保存してあれば良い、というわけではなく、保存方法に決まりがあります。国税庁が公表している資料「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」を中心に、どんな準備をすればよいか確認してみましょう。

今日は、国税庁の資料「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」のII適用要件の最初の見出し【基本的事項】の12問を見てみましょう(問15~26)。

なお、意見の部分はすべて私見であり、後日訂正する可能性があります。

保存要件を定めている目的

電子取引データの保存には要件があります。その要件は次の2つの目的から設けられています(問15)。

真実性の確保・・・データが改ざんされていないことを示す

可視性の確保・・・コンピュータ上、電子データは0と1の羅列であるため、人間が読んで理解することができない。そのため、そのデータ人間が理解できる状態で提示できるようにする

 

具体的な要件

電子取引データ保存の真実性、可視性を確保するため、次の要件が設けられています(問15)。

(1)自社開発のプログラムの場合、システム概要書を備え付ける

(2)ディスプレイの備付け

(3)検索機能の確保

(4)改ざん防止

一見、高額なシステムを導入して対応しなければならないように感じるかもしれませんが、「夫婦二人でスマホだけで商売してます」というような事業者もシステム導入なしで対応できる方法を一問一答で提示していますので、ご安心を。具体的には次回以降で見ていきます。

【基本的事項】の12問で特に見ておきたいのは次の3つです。

 

パソコンとプリンタがなければならない?

「夫婦二人でスマホだけで商売してます」というような事業者も対応できるようになっていますので、パソコンとプリンタの備付けは必須ではありません。常にスマホでやり取りしているのであれば、スマホで上記の要件を満たせばよいです。プリンタも自前で用意する必要はなく、コンビニのプリンタでも良いとされています(問18)。

データそのものの保存場所は?

データの保存場所はクラウド上や海外サーバも認められます(問25)。また、中間決算ごとにデータの保存場所が分かれたり、取引先指定のEDIなどに分かれている、なども認められます(問22)。

記録媒体の縛りもないので、ハードディスク、SSD、DVD、USBメモリなんでもOKです(問20)。ただし、破損や経年劣化でデータを失うことのないようにバックアップを取ることをお勧めします(問23)。

所得税法・法人税法と消費税法の取扱いの違い

所得税・法人税の申告では、電子取引については電子データを保存しなければなりませんが、保存がないことで即、経費として認めない、というものではありません。

一方で、消費税法の規定では「請求書等の保存」が仕入税額控除の要件です。もし「電子取引はデータの保存しか認めない」としてしまうと、保存要件のミスが仕入税額控除の否認となってしまいます。それは厳しすぎるので、印刷した請求書等の保存も認められています(問26)。

ここで一点、ご注意いただきたいことがあります。消費税の「インボイス制度」と「電子帳簿保存」は制度上、全く別物です。電子取引データ保存をすることがインボイス制度対応ではありませんよ。