電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】を読んでみよう【I通則】(前編)

こんにちは。システムエンジニア経験者の税理士 石川幸恵です。

令和6年1月1日以降に電子データでやり取りした請求書や領収書はデータのまま保存しなければなりません。これは、上場企業から個人事業者まで、ほぼすべての事業者が対象です。しかも、ただ保存してあれば良い、というわけではなく、保存方法に決まりがあります。国税庁が公表している資料「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」を中心に、どんな準備をすればよいか確認してみましょう。

なお、意見の部分はすべて私見であり、後日訂正する可能性があります。

電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】の構成

電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】は、I通則、II適用要件に分かれています。II適用要件はさらに小見出しによって【基本的事項】12題、【保存方法】15題、【検索機能】12題、【タイムスタンプ】3題、【その他】16題に分かれています。

お問合わせの多い内容については★がつけられていたり、夫婦二人で営む事業を例とした解説をしたりと、日常の実務に寄り添った内容となっています。

今回と次回で、I通則より電子取引の概要を確認します。

 

I通則【制度の概要等】

I通則には小見出し【制度の概要等】だけがあり、全部で14問です。ここでは、問1で制度の概要に触れた後、問2~10、問14では「こんなやり取りは電子取引に該当する?」という疑問に答えています。

そのほか、令和3年度、4年度、5年度でそれぞれ電子取引データ保存につき税制改正がありましたので、その大まかな適用関係についても触れられています(問11、12、13)。

 

電子取引って何?

請求書をExcelで作成し、PDF形式で保存して、メールに添付して送ったことはありませんか? 郵送すれば切手代がかかりますし、近ごろは郵便にかかる日数も長くなっていますから、「メールで送ってくれれば良いよ」となればスピーディですよね。このように取引に関する情報をデータで送る・受け取るということを電子取引といいます(一問一答問2)。

 

電子取引データ保存の一番のポイントは?

電子取引データ保存の一番のポイントは令和5年12月31日までは、電子取引データを紙に印刷して保存することが認められていましたが、令和6年1月1日からは印刷した書面の保存でなく、データそのものを保存しなければならなくなった、ということです。

 

電子取引データを保存しなければならないのは誰?

電子取引データを保存しなければならないのは、所得税(源泉徴収にかかる所得税を除きます。)及び法人税の保存義務者です(問1)。

もう少し具体的に言いますと・・・、

個人事業者では、事業所得、不動産所得、雑所得、山林所得のある事業者が対象です。青色申告(55万控除・10万控除両方)・白色申告いずれであっても、です。(所法148、232、所規則63)

ただし、雑所得については、前々年の収入金額が300万円以下である場合は業務に関してやり取りした請求書・領収書の保存を要しません(紙、電子問わず。一問一答問68)。前々年の収入金額が300万円以下というのは、主にギグワーカーとしての働き方などを想定していると考えられます。

 

※ 医療費控除の領収書は?

病院を受診したときの領収書を電子データで受け取ることは少ないと思いますが、市販されている医薬品はネット通販もあるようですので、領収書を電子データで受け取ることもあり得るでしょう。

所得税法では、医療費の領収書について「添付しなければならない」とか「提示しなければならない」とされていて、「保存しなければならない」とはされていません。ということは保存義務でないので、医療費控除を受ける人は電帳法においては対象としていないかな、と考えられます(所法120④、⑤)。

では、紙に印刷して保存すべきか?というとむしろ逆で、対象外ということは保存要件が問われない、ということですし、提示とは原本を見せることであり、原本はデータであるわけですから、すぐに提示できるようデータ保存をするのがベストだと思います。

 

法人の場合、青色申告、白色申告問わず、すべての法人です(法法126、150の2)。

後編へ続きます。