年末調整。今年の変更点、よく迷うポイント

こんにちは。消費税にうるさい税理士 石川です。

税務署から年末調整の書類が届く時期になりました。小規模な会社でしたら、社長本人や社長の奥さんが、「従業員に年調の書類をいつ渡せば良いかな」と考えていることと思います。

今年の年末調整は、昨年と大きな変化はありません。
とは言うものの、配偶者関係について昨年、非常に大きく変わったので、今年も「あれ?」となりがちです。

今年度唯一の変更点と、配偶者関係その他で従業員さんから質問されそうなポイントをいくつか挙げてみました。

令和元年の変更点

令和元年の年末調整で書いてもらう扶養控除等(異動)申告書の一番下に新たに追加があります。
単身児童扶養者、という欄です。
国の税金である所得税に影響はなく、市町村民税での対応です。

シングルマザー、シングルファーザーで合計所得金額が135万円(給与のみの収入なら204万円)以下の方については、住民税を非課税にする制度です。

この単身児童扶養者の「単身」の意味ですが、事実婚のお相手がいる場合は単身と認めません。つまり事実婚のお相手がいればシングルマザー、シングルファーザーに当てはまりません。一方、所得税では、事実婚は配偶者として認めておらず、配偶者控除は受けられませんので、ご注意ください。

なお、この住民税の非課税の適用が実際に始まるのは令和3年です。

質問1.扶養控除等申告書は令和2年分、配偶者控除等申告書と保険料控除申告書は令和元年分って書いてありますけど?

右上にマル扶、と書いてある扶養控除等(異動)申告書。これは、その年分の最初の給与をもらう日までに書いてもらうものです。
ですので、ずっと働き続けている人については、毎年、年末調整のタイミングで翌年分を書いてもらいます。

配偶者控除等申告書と保険料控除申告書はその年の年末調整のための資料なので、令和元年分なのですね。

令和元年分という扶養控除等申告書がない・・・。それは平成31年分と一緒だから大丈夫。

もし、年の途中で入社した従業員さんがいて、平成31年分(令和元年分)の扶養控除等申告書を書いてもらっていない場合には、併せて書いてもらいましょう。

本来は、入社後、最初の給与を支払う日までに書いてもらわないといけないものです。今後は、「今日からよろしくね」という日に書いてもらうと良いと思います。

質問2.配偶者控除等申告書の書き方がわからない

妻(夫)の収入がいくらだったら控除が受けられるのかわからない、配偶者控除等申告書の書き方がわからない、というのはよくある質問だと思います。

妻(または夫)について配偶者控除や配偶者特別控除を受けたい、という人には、配偶者控除等申告書を書いてもらいます。数字の書き方で困っている従業員さんには、可能であれば、妻(夫)の源泉徴収票のコピーを添付してもらいましょう。配偶者控除を誤りなく適用できます。

配偶者控除や配偶者特別控除がいくらなのか。
配偶者控除等申告書はよくできていて、書類上で算出できるのですが、複雑で、しかも超、字が小さい。所得と収入をごっちゃにしてしまう人も多いです。
パート収入と所得の関係を図解してみました。①~④のいずれなのかがわかれば、一番下の欄に到達できます。

質問3.年調後、配偶者の所得金額に変更があった場合

年末調整の還付金を年内に渡したい場合、配偶者控除等申告書を見込みで書いてもらうしかないですよね。
実は12月の給料が思ったより多かった、ということも起こりそうですし、もし妻(夫)が個人事業主だったら、売上や経費を年内に正しく計算するのはちょっと難しいですよね。

「配偶者の収入が違っていました」と相談を受けたらどうしたら良いでしょうか?

年明けの1月末日までであれば、年末調整をやり直しできます。
または、やり直しはせず、そのまま源泉徴収票を従業員さんに渡して、個人で確定申告をしてもらうという方法もあります。

質問4.配偶者が個人事業者である場合

妻(または夫)が個人事業者の場合、所得はどうやって計算したら良いのでしょう?

事業主の妻(または夫)の確定申告に当たって、青色申告の場合には青色申告決算書、白色申告ならの収支内訳書を作成します。ここから所得を確認できます。
収入-経費(仕入、経費、減価償却費などなど)-青色申告特別控除額(65万円または10万円)が所得金額。
これを判定の表にあてはめて、配偶者控除の額または配偶者特別控除の額を計算します。

年末調整は遅くとも1月中に行います。が、個人事業者の確定申告は3月15日を目標に作業するので、年末調整までに妻(または夫)の所得が確定しないことも考えられます。このような場合には、配偶者控除なしで年末調整を行い、後で自分で確定申告してもらうのが実際の対応になるかと思います。

まとめ

実は来年の方が恐ろしい。今年は変更点がほとんどないのですが、来年は、激変があります。基礎控除、給与所得控除が変わります。保険料控除証明書も今年まではハガキなど書面のみの提出方法でしたが、来年度から電子データで提出することも可能になります。

いろいろ変わるので、しっかりついていきたいと思います。

参考:週刊税務通信 No.3578 年末調整の留意点をQ&Aで詳解