飲食店での税務調査の特徴と注意点

税務調査。

会社を何年も経営している方は経験があることと思います。

伊丹十三監督の「マルサの女」でご存知の方もいらっしゃるでしょう。

  • いつ来るのか?
  • 本当に来るのか?

考えるだけでドキドキしてくるかもしれません。

実際には、法人で、だいたい3年~4年に一度くらい、とも言われます。
(経験上、もう少し少ないかと思います。)

「うちは赤字だから来ないでしょ」

そうでもありません。

利益がないと、法人税は納めていないかもしれませんが、調査の対象は法人税のみではありません。

消費税、お給料や報酬の源泉所得税、契約書に貼る印紙税の調査というのもあります。

そんな税務調査ですが、飲食店の場合には、少し変わった特徴があります。

飲食店の税務調査の特徴

税務調査の際、客商売でない会社の場合の調査は、会社の会議室などで総勘定元帳などを調べて

「この経費は何ですか?」

というやり取りになるようですが、飲食店は少し違います。

一般市民の顔をして覆面調査

税務調査官は、まず、一般市民の顔をして覆面調査にやってきます。

どういうお店が狙われるかというと、

「繁盛している割に申告書の売上が少ない」

と思われたお店。

覆面調査にやってきて、客数などをチェックするようです。

小一時間過ごすようです。聞いたところによると、業務として申請し、食事代は経費精算するそうです。

流行っていそうだから儲かっているはず。

しかし、実際にはそうそううまくいかないことも多いです。

日本政策金融公庫の方は

「ものすごく流行っていそうなお店でも、ふたを開けると売り上げは大したことなくて、火の車というお店はたくさんある。だから事業計画は厳しく作ってください」

と言っていました。

ですから、

「流行ってそうだったから、対象にしました」

と調査官から聞くとちょっと腹が立ちます。

「『おいしかったですぅ~』だと(-“-)!?」

とか思いますが、対象になってしまったものは仕方ありません。

税務調査本番

そして、ある定休日の朝、調査官二人が経営者の自宅にやってきます。

なぜ定休日に自宅なのか。

それは、「お店の営業妨害だ」と言われないためです。

そして、「昨日の売上金を見せてください」と言います。

「昨夜、調査官が目印を付けたお札がない!」みたいなシーンはないようです。

ちょっと特殊な例

過去の経験では、ランチ営業終了直後に来て、

「現金有り高と注文伝票を見せてください」

と言われたこともありました。

注文伝票を集計して、現金有り高と付け合わせれば、売上を抜いているかどうかすぐわかりますからね。

税務調査時の注意事項

ここで、注意です。

令状でも持っていない限り、調査は任意です。お金を見せる必要はありません。

「任意ですよね? 税理士に連絡しますので、そのままお待ちください」

と毅然と言ってすぐに税理士に連絡してください。

税理士と調査官が電話でやりとりし、とりあえずその場はお帰りいただきます。

そして、改めて、日程を決めて税務調査になります。

その際には、平成○年分と○年分の法人税、消費税、源泉所得税というように、時期と税目が指定されます。

営業妨害にならないよう気を使ってくれるのが、良いのか悪いのかわかりませんが、営業日であれば、休憩時間の14:00~17:00頃のごく短時間に来ます。

その場ではほとんど資料の内容を確認しません。

レジロールや領収書、総勘定元帳、預金通帳、賃金台帳など必要な資料について原本やコピーを持ち帰ります。

原本については預かり証を作ってくれます。

後日資料を返してもらうときに必要なので、必ず保存しましょう。

そのほか、

  • 予約台帳なども見せて、と言われたり
  • レジのオペレーションを聞いたり
  • 中締めをしてその時点での現金有り高を聞かれる

などもあります。

朝一のつり銭の額、一定にしていますか?

中締めをして現金有り高を聞かれても大丈夫ですよね?

中締めの額+つり銭の額が現金有り高ですよね?

ここで違っていると、「売上抜いてる?」と思われても仕方ありませんよ?

税理士と調査官の間で質疑応答

資料を預かって帰ったら、そのあとは原則、税理士を通しての質疑応答になります。

資料を持って帰ってから、1週間から10日後には、経営者の方の知らないところで、税理士と調査官の間で質疑応答が始まります。

調査官から直接質問されるとなると、緊張したり、何か誤解されるようなことを言ってしまったらどうしよう、と不安になったりすると思いますが、必ず税理士を通してやり取りできるので、ご安心ください。

傾向として、伝票からレジを打つ際のミスがあったとか、まかない食の食事代をもらっていないなどいくつか細かい指摘事項は出ます。

意図的な売上除外とか二重帳簿とか大ごとにならなければ、2ヶ月程度のうちには修正申告などをして終わりになります。

いきなりの訪問を防ぐためには?

添付書面があると、税務調査の前に意見聴取があります。

そのため、

  • 定休日の朝
  • ランチ営業終了直後

などに、急に調査官が現れるということがほぼなくなります。

だからこそ、信頼関係を築いて、書面添付できるようにしましょう。