あなたのお店の手書き領収書は大丈夫?令和元年10月1日以降の領収書の書き方

こんにちは。消費税にうるさい税理士 石川です。

複数税率になって間もなく3ヶ月。ポイント還元のおかげもあって、消費の落ち込みはそれほど大きくはなかったようですね。

消費税の税率アップはこれで3回目です。事業をやっていらっしゃる方は、税率が変わる都度、販売価格の見直しをしてきたことと思います。でも、領収書の書き方までは特に意識してこなかったかもしれません。

特に今回の税率アップの場合、パン屋さんや豆腐屋さんのような単一の飲食料品のみを扱うお店では、販売時の税率は以前と変わらず8%のまま。

そのため、「今までと変わらないでしょ?」と領収書の書き方を変えていないかもしれません。

もしかしたら、「ウチは免税事業者だから、預り消費税とか関係ないし。お客さんから受け取った金額を書いているだけだよ」という方もいるかもしれません。

でも、それで大丈夫なのでしょうか。確認してみましょう。

法律で定められていること

令和元年10月1日以降の領収書に書くべきことをかみ砕いて表現すると次のとおりです。

①販売したお店の名前
②商品を売った、または、サービスを提供した年月日
③商品やサービスの内容(軽減対象資産の譲渡等、つまり8%の税率の商品である場合には、「商品の内容」と「軽減対象資産の譲渡等である旨」
④税率ごとに合計した商品またはサービスの税込価額
⑤販売相手の氏名又は名称

これまでの領収書から追加されたのは、③のカッコ書きの部分です。
販売した商品が食品で、軽減税率対象の場合には、食品である旨と「軽減税率対象」とわかるように書かなければならなくなりました。

ちなみに、⑤の販売相手の氏名又は名称は、小売業や飲食業などを営む事業者(消費者がメインの取引相手である事業者)が発行する領収書の場合には、省略しても無効ではありません。

「商品の内容」、「軽減対象資産の譲渡等である旨」を具体的にどう書くか

「商品の内容」としては、「食品」とか「飲料」などわかりやすく書きましょう。「品代」はよろしくありません。

そして、「軽減税率対象資産の譲渡等である旨」については、食品の販売であれば、「軽減税率対象」と書きます。「軽減」などわかる程度に省略するのは問題ないと思います。一つずつ書くのが大変であれば、スタンプを用意するのも良いでしょう。

うちは消費税の申告をしなくて良いから関係ない?

消費税を納める義務のない小規模事業者さんは、販売した商品が税率8%なのか10%なのか、気にしなくても困らないでしょう。

ですが、商品を購入した相手が消費税の納税義務者である場合、購入相手は、税率がわからなければ経理処理できません。そのため、問い合わせが来るかもしれません。

「ウチ、免税だから、税率とか関係ないんだけど…」ではダメです。ご自身の扱っている商品が、もし課税事業者さんのお店で売られていたら8%なのか、10%なのか、把握しておく必要があります。

実際の事例で確認

どう困るのか

この領収書の発行者は豆腐屋さん。「食品を買ったのかな~」と推測してしまいますが、本当に食品を買って税率8%だったのか、がわかりません。もしかしたら、豆腐とみりん(みりんは酒類のため、消費税率10%)の合計額なのかもしれないですよね。

問題点は、③商品やサービスの内容、④税率ごとに合計した商品またはサービスの税込価額が書いていないことです。

食品と食品以外を同時に販売した場合

豆腐とみりんを販売したのであれば、販売した商品の内容と、それが軽減対象税率対象なのかを書きます。そして、税率ごとに合計した税込価額を書きます。

全額が軽減税率対象の場合もその旨書く

「8%のものと10%のものを両方買ったら、内訳が書かれていないとわからないかもしれないけれども、全部8%のものなら、わかるでしょう?ウチは豆腐屋なんだからさあ」

やはりそれでは困ります。

食品(軽減対象)と書いていないと、全部が標準税率10%のものかもしれない、と思ってしまいます。きちんと食品(軽減対象)と書いてください。

ちなみに全部が標準税率の場合は、みりん(標準税率対象)とは書かず、「みりん」という書き方で大丈夫です。

 

受け取り側が追記するのは認められている

豆腐屋さんで3,500円分の買い物をした本人は、何を買ったのかわかっているはず。
そこで、領収書をもらった人が「豆腐(軽減対象)」と書き込むことは、認められています。

軽減税率のものと標準税率のものの両方を買って、内訳がわかっているのであれば、(2)のような書き込みも認められています。現実的には、明細なしで記憶で書くのは難しいでしょうけれども。

ただし、書き加えて良いのは、軽減対象資産の譲渡等である旨と税率ごとに合計した商品またはサービスの税込価額のみ。
それ以外の金額や日付を領収書の受け取り側が書き込んではいけません。