侮れない個人事業税。東京都で保険外交員さんに対して課税強化

こんにちは。消費税にうるさい税理士 石川です。

今日は個人事業税についてです。ちなみに私は事業税の受験はしていませんので、事業税にはうるさくありません。

個人事業税は、賦課課税。
都道府県税事務所が税額計算をしてくれて、納税通知書を送ってくれます。

4月22日と24日に所得税と消費税の振替納税が終わりました。近々、住民税の納税通知書が来て、一段落。
かな、と思っていたら、個人事業税という見慣れない税金の通知まで来た!

平成29年度辺りから、東京都が、保険外交員さんの扱いを変えたようですので、注意が必要です。

個人事業税とは

法人の決算申告では、事業税は申告納税方式。申告納税とは何かというと、法人が自分で事業税額を計算して申告書を書き、納付します。この「自分で計算」というところが申告納税のポイント。

一方、個人事業税は賦課課税。賦課課税というのは、税額を市町村役場などが税額を計算してくれる方式です。賦課課税でメジャーなものは固定資産税や自動車税。いくら納めれば良いのか、市町村役場が計算してくれて、納税通知書を送ってくれますよね。

個人事業税は、毎年3月15日までに提出した所得税の確定申告書が都道府県税事務所(都道府県の機関)に回され、確定申告書や決算書の金額が基となって税額が計算されます。

事業税なんて聞いたことも払ったこともないという方。個人事業税はかかる業種が限られています。
まず、サラリーマンにはかかりません。個人事業にのみかかるのですが、個人事業の中でも70の事業に限定されています。
この70の事業に当てはまるのか当てはまらないのかは、都道府県税事務所の判断です。

この70の事業に当てはまってもすぐに税金が発生するわけではありません。所得税の青色申告特別控除(65万ってやつ)を控除する前の所得が290万円を超えると、超えた部分に税金がかかります。

税率は事業によって3、4、5%のいずれか。税額は、ざっくりいうと(所得 - 290万円)×3、4、5%。

税額の計算は全て都道府県税事務所やってくれて納税通知書を送ってくれます。賦課課税ですからね。
支払方法は、原則8月と11月の年2回払いです。

ちなみに税理士業もかかります。税率は5%。

保険外交員の場合

保険外交員さんは、個人事業主として所得税の確定申告をされていると思います。
これは、個人事業税がかかる70の事業で見ると「代理業」に当てはまる・・・?、というところがあいまいで、当てはまらないという運用をされている都道府県もあるようです。

都道府県によって違う…。同じ日本で同じ仕事をしていて違う?ちょっと不思議でもあります。
この違いについては、個人事業に対して、土地ごとの慣習や慣行を考慮して良い、要するに地方ごとの裁量を国が認めているということのようです。

東京都も平成28年までは対象外としていました。ところが、平成29年度分の個人事業税から、保険外交員は「代理業」に該当するという運用に変えたようです。きっかけは、保険業法の一部改正(委託型保険募集人の廃止等)だそうです。

所得税の確定申告書の2ページ目の下の方に事業税に関する事項、という欄があります。ここに”非課税”と書いていても、今後、東京都が課税対象として納付書を送ってくる可能性があります。

同じ東京都でも

「保険外交員で同じような所得で同じ東京都内なのに、事業税が来た人と来なかった人がいて不満」という声を伺いました。
来た来なかったの明確な基準はわかりません。
が、都税事務所ごとで違う可能性は考えられます。
東京23区は、9つの都税事務所がエリアごとに分けて担当しています。
それぞれの都税事務所内での処理の優先順位などによって、今のところ、来た来なかったが分かれているのかもしれません。東京都自体の方針ですから、遅かれ早かれ、だと思いますが。

個人事業税、どれだけ増えたのか正確な人数はわかりませんが

東京都は、新たに何人の保険外交員さんに個人事業税を課したのか、は明らかにしていません。

が、税務通信No.3546によると、保険外交員さんによる個人事業税についての行政不服審査(※)申し立てが平成30年度に急増したそうです。
保険外交員さんからの申し立て件数が平成29年度は1件でしたが、平成30年度中については最後の1ヶ月を残して(アップされていたのが2月まででした)すでに15件。

行政不服審査の答申や結論、判断理由がpdfで掲載されていますので、私もざっと読んでみました。
15件すべてで、「保険外交員の仕事が個人事業税の対象となる事業かにあたるか」について不服を申し立てたようですが、全て棄却。

個人事業かそうでないかの判断のポイントは、「自己の危険と計算において独立的に反復継続して行われているか」か「労務の提供」か。前者なら個人事業で、後者なら給与です。
収入と経費合計の金額や割合、月ごとの収入金額の差、自宅の減価償却費、秘書の人件費、地代家賃や旅費交通費などを挙げて、労務の提供ではなく、独立した事業と判断されていました。

ちなみにどこの都税事務所かについては伏せられていました。○○都税事務所となっています。

※行政不服審査・・・国や地方公共団体が行った納税額の決定などに対して不服を申し立てられる制度です。

納税準備しよう

所得から290万引いて5%。
確かに、急に言われたら、驚く税額だと思います。

私のクライアントには、毎年、事業税の額も試算しています。
ちなみに事業税は、経費に入れることができますので、納付の領収書は捨てちゃだめですよ。

 

税務通信No.3546を参考にしました。