銀行が融資をしてくれているから、うちはまだ大丈夫、と思うのは危険

得意先に製品を納品。でも、代金がもらえるのは1ヶ月先。給料や仕入資金に充てるために運転資金が必要。
独立開業の時に、必要な機械を買うための設備資金を借りた。
借入のある会社は多いと思います。
次も借りられるのか?返していけるのか?
不安にならないために、今どきの銀行の事情と、借入返済の指標についてまとめました。

銀行融資 危うい復調

今日の日経新聞の1面、トップ見出しです。2018年末の邦銀による国内貸出残高は504兆3974億円で、約20年ぶりとなる高水準。
元となるデータは日銀の貸出金統計。気になったので実際に日銀のホームページを見てみました。
日銀のホームページって実はすごい。レポートをpdfで見るのかと思いきや、そうじゃない。自分で項目や期間を設定して、データを検索、グラフ作成をしたり、データのダウンロードもできます。ダウンロードしたデータを使って詳細にエクセルで分析、グラフ作成することも可能ですし、ホームページ上で折れ線を棒グラフに変えたりとある程度のグラフ作成もできます。

日経新聞に出ているグラフに私の目線で項目を一つ追加してみました。設備資金です。504兆円というのは、総貸出額。そのうち、設備資金は、242兆3392億円でした。設備は意外と少ない。ということは、逆に運転資金が多いのですね。

今、銀行から融資を受けるハードルは高くない

日経新聞はこの記事で、景気回復に賛辞を送っているわけではありません。
返済能力の低い企業にも低利で貸す競争が激化、特に地方銀行に問題あり、と指摘しています。低金利の影響で、銀行が利益を出せなくなっているから、他行より低い利率を提示して融資先を奪い合い、返済能力の低い企業にも貸し出しが及んでいるのです。メガバンクは?というと、すでに海外展開など別の方向に目を向けていて、融資にはあまり力を入れていません。

日経新聞の記事の例では、保証協会の保証付きの融資を受け、さらに社長個人もお金をつぎ込んでいる企業に「社長の個人貸付分も保証協会の保証なし(=これをプロパーという)で丸ごと融資します」と言って他行から借り換えさせたり、信用金庫への返済が3か月滞っていて本来なら不良債権の扱いとなる企業に借換で融資したり。

「通帳の残高はだんだん減っていく気がするけれど、追加融資を受けられたから大丈夫。銀行からまだ見放されていない」と思うのは大きな間違いですよ。

利息が払えればゾンビではないというものの…

ゾンビ企業ですら、低利でお金を借りられている、と記事は書いているのですが、ゾンビ企業の定義ってあるのでしょうか?
自分の会社は、ゾンビじゃないと言える?
ゾンビの判定をしてみましょう。決算書や試算表を見て

(営業利益+受取利息・配当)/支払利息

を計算してみてください。これが1を下回ったらゾンビです。
計算の意味は、利益で利息を払えていますか?ということです。

ちなみにこの指標のことをインタレスト・カバレッジ・レシオといいます。

ゾンビじゃないことで喜んで良いのかな?
元本はどうするのでしょう?

事業を継続していくためには、元本を返し、かつ修繕や次の投資のためのお金を貯める

事業を継続していくためには、なによりもまず現預金が増えていくことが基礎。
現預金がなければ、設備にも人にも投資できませんからね。
減価償却費が1年間の元本返済額より多かったら大丈夫。借入残高は順調に減っていき、現預金も少しずつ増えていくでしょう。
そうではない場合でも、現状では銀行は追加でお金を貸してくれるかもしれません。

でも、いつまでも続くとは限りません。とくに、設備資金の元本が返せていないとか、運転資金の借入がだんだん増えていく場合には、危機感を持って、事業の見直しや新しい事業の立ち上げ、できることは何でもやってみてください。

余談ですが、借入がどうしても返せず、廃業、破産、という言葉がちらついたとしても、思い詰めたり、金融機関の言いなりにならなくても良いです。
「破産法」や「経営者保証に関するガイドライン」で、現金は最低99万円手許に残せることになっています。
また、華美でない自宅であれば売却しなくても大丈夫な可能性があります。無一文になるまでがんばり続ける必要はないです。
※余談のようなお話は「企業再建実務コース」を受講して学んでいます。