政治家の名前を冠した朝食セミナーの参加費の勘定科目は?

こんにちは。税理士の石川です。

先日、「政治家の名前を冠した朝食セミナーの参加費の勘定科目は?」というお問い合わせをいただきました。このお問合せには「セミナー」、「朝食」、「政治家の名前」とたくさんのキーワードが含まれています。順を追って見てみましょう。

 

会計処理・法人税法の取扱い

セミナーや研修というと、新入社員が業務に必要な技術や知識を身に着けるための新人研修のほか、中堅幹部向けのマネジメントスキルセミナー、ハラスメント研修など、日々の業務に必要不可欠なものが多く思い浮かびます。

日々の業務に直接結びつく内容のものであれば、「研修費」や「教育費」などの勘定科目で処理することになるでしょう。少額ならば、「雑費」として処理するかもしれません。

では、セミナーと名前が付いていても、経営者向けの朝食セミナーなど勉強以外の要素がくっついてくるとどうでしょう? 「朝活」とか流行りましたよね。

「お腹を満たす(そのためだけに行く人はいないと思いますが)」、「主催者やほかの参加者との交流」など日々の業務にすぐに結びつかないような要素が大きければ、「交際費」で処理することになると思われます。

さらにここに政治家の名前が入ってくるとどうでしょう? 政治資金パーティー?という疑問が生じてきます。

「政治資金パーティー」は、政治資金規正法によって案内状やパーティー券などの書面において「この催物は、政治資金規正法第8条の2に規定する政治資金パーティーです」という告知をしなければならないことになっています(政治資金規正法22の8)。

この告知のある「政治資金パーティー」であることで勘定科目が決まるわけではありません。参加人数分だけのパーティー券を購入して実際に会場を訪れ、お腹を満たし、情報を得て、交流もしてきたというのであれば、「交際費」となります。しかし、「政治家の活動費のための購入であって、参加しなかった」という場合は、実質的に政治家の活動のための寄附なので、「寄附金」として処理します。

 

消費税法の取扱い

国税庁のホームページにおいて、「政治団体は、政治資金を集めることを目的として政治資金パーティーを開催した際に受領する金銭に対して適格請求書(いわゆるインボイス)を交付する必要はありません」とされています。

パーティー券の購入者側目線で見ると、お金を払ってパーティー券を買ってもインボイスは交付されないでしょうから(領収証はもらえます)、消費税の計算上、仕入税額控除はできません。

インボイスをもらえない場合、「8割控除の経過措置を受けられる?」というところも気になるところです。消費税の課税取引であれば8割控除の経過措置を受けられるのですが、政治資金を集めることを目的としたパーティーのパーティー券購入は政治家に対する寄附であって対価性がなく、消費税の不課税取引とされます。不課税取引ということは8割控除の経過措置の適用もありません。実際に会場を訪れ、会計処理上、交際費としたとしても、消費税法の取扱いでは不課税取引になることに気をつけてください。

 

※当ページの執筆にあたり、次のサイト等を参考にしています。

東京地方税理士会
暮らしと税「パーティー券購入は寄付か交際費か?」

新潟県ホームページ
政治資金パーティーの開催に関して規制があります

国税庁
政治資金パーティーと適格請求書について

税務通信No.3776 4~5ページ