こんにちは。税理士の石川です。
- アマゾンでの買い物の領収書を1枚ずつ印刷して保存するのは面倒…
- 電子メールに添付して受け取った請求書は印刷しなければならない?
答えから先に書きましょう。
印刷しなくてもオッケーです。税務署に対して申請書を提出する必要もありません。ただし保存要件があって、これが結構厳しい。
ペーパーレス化がどんどん進む状況で、令和2年6月30日に、電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(以下、このコラム内でQ&Aとあったら、これのことです)が公表され、電子取引について印刷の要否や印刷しない場合の保存方法が示されました。
内容を少し見てみたいと思います。
印刷しなくても良いデータの例示
代表的なものとして、
- 電子メールの添付ファイルとして受け取った請求書や領収書等のpdfファイル
- 電子メールの本文に直打ちされた請求内容
- アマゾンのサイトで表示した領収書の画面ハードコピー
- PayPayの取引履歴の画面ハードコピー
- 取引先との間でEDIシステムを利用している場合のデータ
などがあります(Q&A問3を基にして、身近な例を入れています)。
保存方法の要件
- ディスプレイやプリンタの設置
- 検索できること
- 訂正や削除の防止措置
自社開発のプログラムならば、コンピュータシステムの概要を記載した書類の備え付けも必要です(Q&A問9)
ディスプレイやプリンタの設置
機能や設置台数の要件はありません。あれば良い、と言う感じです。まあ、普通はありますよね。
検索機能について
Q&A問26には次のように書いてあります。
- 取引年月日その他の日付、取引金額などで検索できること
- 日付や金額については、範囲指定の検索も可能であること
- 二種類以上の条件設定ができること
上記より、
- 電子メールをメールソフト上に保存している…NG(Q&A問3)
- pdfファイルで受領した請求書やスマホ画面のハードコピーのようなデータをファイルサーバにフォルダを作って保存している…NG
です。
やはり、ファイル管理システムなどの利用は必要かと思われます。
一方で、取引先との間でEDIシステムを利用しているなどの場合は、そのEDIシステムが検索機能を有していれば(普通はあるでしょうね)、要件を満たします。
訂正や削除の防止措置
「ファイルの保存日時が実際の取引日と近い」というだけでは、残念ながら、訂正がされていないという証明になりません。
- 文書の作成者又は受領者どちらかが、タイムスタンプ(一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプ)を付ける。
- 訂正削除を行った記録が残るか、訂正削除ができないシステムを使う
- 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け
が必要です。
一番簡単なのは、事務処理規程(Q&A問19に雛形あり)だと思います。
事務処理規程の内容としては、
- 責任者を定める
- 原則、訂正削除をしない、
- 訂正削除する場合は申請書の作成や承認など社内規定に基づいて行う
として、運用すればオッケーです。
EDI取引の印刷不要が最も取り組みやすそう
「取引先から、受発注や請求はWeb上のシステムを利用するように言われた」というお話はたびたび聞きます。これらのシステムはいわゆるWeb-EDIに当たるものと思われます。
このようなシステムでは、訂正削除については管理されているでしょうし、データの検索機能も付いていることと思いますので、保存要件は満たせそうです。
一方で、pdfファイルや画面ハードコピーの保存については、ファイル管理システムの利用や事務処理規程の整備など、運用まで少しハードルがありそうです。