税込700円のランチ、消費税増税分を値上げするとしたらいくらにすれば良い?

こんにちは。消費税にうるさい税理士 石川です。

飲食店経営者さんにとって、値上げによってお客様が離れてしまうのではないか?というのはとても不安なもの。
ですが、消費税の増税分はやはりお客様に負担してもらわざるを得ません。

  • 税込価格でずっとやってきたが、消費税分を値上げするにはどう計算したら良いのか?
  • 消費税分以上に値上げしても良いのか?

Q&Aっぽくまとめてみました。

お店をオープンして10年。うちは700円ランチが売りなんだよ。
消費税が5%から8%になったときも据え置きにしたんだ。
でもさあ、消費税の納税額がどんどん増えて、手許にお金が残らないんだよ。何でかなあ。

消費税が上がっているのに税込価格を上げなかったら、実質的には値下げしていることになります。

下のグラフを見てください。税込700円のランチの本体価格は、消費税率5%のときは667円、消費税率8%のときは648円、消費税率10%になると637円。

10%になった現在では、消費税率5%のときと比べて30円も値下げしたことになってしまっています。

お金、残らないはずだよね。さすがにきついから、値上げした方が良いね。でも消費税分の値上げっていくらにしたら良いの? 700円の2%だから14円上げれば良いの?

当たらずも遠からずですが、税込700円の2%分の14円上げるというのは厳密には正しくありません。

まず、税込700円を本体価格と消費税に分解しましょう。本体と消費税部分の金額を分けるためには割り算をします。

本体は、700円を1.08で割ります。700円÷1.08=648.148148148…
1円に満たない分は四捨五入しましょう。
648円、これが本体価格です。

消費税率8%時代の税込価格から本体価格を計算する
本体価格 = 税込価格 ÷1.08
消費税額=本体価格×8%

本体648円に8%を掛けたのが消費税です。648円×8%=51.84円。四捨五入して52円としましょうか。

本体648円+消費税52円で700円になっていますよね。

消費税率が10%になったので、本体648円に、改めて10%分の消費税を上乗せしましょう。

648×10%=64.8。四捨五入すると65円ですね。本体648円に65円を足して713円となります。

本体価格に10%の消費税を乗せる
10%の税込価格=本体価格+本体価格×10%=本体価格×1.1

 

本体価格は据え置きして消費税部分が8%から10%に増えました。だからこういうグラフになります。

消費税分を値上げすると713円になるんだ。でもうちは1円単位のメニューは作りたくないんだよね。
どうしよう?710円かなあ?

埼玉県では、最低賃金がここ10年で735円から926円に上がりました。ガソリン代も上がっていますし、小麦粉や乳製品などの食材も年々値上がりしています。

そのような中、10年間も700円ランチをがんばってきたのですから、消費税増税分だけでなく、価格の見直しをすべき時期が来ていると思います。例えば、800円に値上げしても良いのではないですか?

厚生労働省 平成14年度から平成30年度までの地域別最低賃金改定状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000541154.pdf

800円はさすがになあ…。750円くらいにしようかな。
でもさあ、消費税分以上に値上げしたら、お客さんから「便乗値上げ」って言われない?

丁寧に説明すれば、便乗値上げには当たりません。
消費者庁のパンフレットにも「合理的な理由があれば、便乗値上げには当たりません」と書いてあります。

消費税の適正かつ円滑な転嫁のために(10%引上げ対応版)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/consumption_tax/pdf/consumption_tax_190515_0001.pdf

ですから、お客さん向けの張り紙を作ってはどうでしょう?

  • 昨年の10月から消費税が10%になったこと
  • 10年間値上げしてこなかったこと
  • 食材費や人件費が値上がりしていること

などを丁寧に書けば、お店のファンの方々は理解してくれると思いますよ。