国税庁の軽減税率Q&Aを見てみよう その4

こんにちは。消費税にうるさい税理士 石川です。

今日は屋台、ショッピングセンターのフードコートなど、独立した店舗とはちょっと違ったタイプの飲食店を取り上げます。

持ち帰りか店内飲食かの境目は、テーブル・椅子などの設備があるかどうかです。
実際にはどう判断するのか、以前から掲載されていたQ&Aにも広げて見てみましょう。

前提と問題点を確認しよう

お腹を満たすためにお金を払うという目的は一緒でも、持ち帰るかその場で食べるかで消費税率が異なります。
その境目は、飲食設備があるかどうか?

飲食設備とは、テーブル、椅子、カウンターなど飲食するために使われる設備をいいます。

ものを食べるシチュエーション

  • 戸建ての店舗や建物内のテナントなど、壁で仕切られて独立した店舗の中
  • 食べ歩き
  • 買い食い

などがあります。

食べ歩き、買い食いにもいろいろあって、

  • 簡易なテーブル、椅子を置いた屋台
  • ショッピングセンターのフードコートのようにテーブルと椅子がずらりと並んだエリアをラーメン、うどん、カレーなどの店がぐるりと取り囲んでいるところ、
  • 縁日の出店で買って、食べ歩き
  • 公園に来ていた移動販売車で買って、公園が設置したベンチで食べる
  • 新幹線のワゴン販売
  • 近頃増えてきた肉フェス、ビールフェスのような、フードイベントなど

があります。

テーブル、椅子は誰が設置した?

このようにいろいろなシチュエーションがあると、テーブルや椅子を用意した事業者と飲食料品の提供者が違う、という状況が出てきます。

独立した店舗は、テーブルや椅子の所有者はその店舗でしょうね。

でもショッピングセンター内のフードコートのテーブルや椅子は、ショッピングセンターの所有物で、お店は調理して食べ物を提供しているだけでしょう。
フードイベントもイベント主催者が食事や休憩できる設備を用意し、出店者は食べ物を提供するのみ、だと思います。
屋台もいくつか集まって観光スポットにしているような場所では、共用のテーブルや椅子が用意されているかもしれません。

「飲食料品の提供者がテーブルや椅子を用意していないから、持ち帰りが前提。つまり消費税率は8%」と言ってよいでしょうか?

消費税率はどうなる?

屋台のおでん屋やラーメン屋、ショッピングセンターのフードコート、フードイベントなどが、テーブル、椅子、カウンター等でお客さんに飲食させていると、消費税率は標準税率10%です。

飲食料品を提供するお店がテーブル、椅子を用意している場合はもちろんのこと、イベントの主催者やショッピングセンターがテーブルと椅子を用意した場合でも、そこで飲食させることについて、お店とテーブルや椅子の設置者との間で合意がある場合は、標準税率10%となります。

合意?

合意ってどういうレベル?

合意といえば、やはり契約書でしょ。期間限定のイベントなどでは、使用許可書とか?

契約書とか使用許可書とか、かっちりしたものを作っていなければ、「客が勝手に座って食べているだけ。消費税率は軽減税率8%で良いでしょ?」と言えそうな気がします。

ですが、これはNG。10%となります。

理由は、合意に「黙示の合意」も含むから。黙示の合意…。言葉、難しいですね。

契約書などがなくても、客がそこで食べることについて、テーブルや椅子の設置業者に黙認されており、かつ、屋台の主がそのテーブルや椅子を自分の設備のように利用させている状況であれば、合意ありということになるようです。

ただ、この自分の設備のように利用させるという状況の具体例は、次のように書いてあるのです。「顧客を案内、メニューを置く、配膳、下膳、清掃」。

屋台やフードコート、フードイベントも、セルフサービスがほとんどなので、清掃と、客が片づけなかった食器を片付けるくらいかなとに思うのですが。

(8%)公園に来ている移動販売車

移動販売車の主はテーブルや椅子を用意せず。
買ってくれたお客さんは「たまたま」近くにある公園のベンチで食べているだけ。

このようなシチュエーションの場合は、軽減税率8%となります。
公園のベンチの設置者と移動販売車の主の間には飲食させることについての合意がなく、誰でもベンチを利用できるから、です。

(8%)遊園地の売店で販売した飲食料品を来園者が園内に点在するベンチで食べた場合

これも公園の移動販売車と同じく、軽減税率8%となります。
遊園地の中に点在するベンチというのは、売店の管理が及ばないから、飲食料品を販売しただけ、という理由です。
管理というのは上で見た自分の設備のように利用させるということをいいます。メニューを置いたり、配膳、下膳、清掃などです。遊園地内に点在するベンチまでは管理しきれないですからね。

(8%)新幹線のワゴン販売

新幹線のワゴン販売。私は、あのカッチカチのアイス、好きです。
#シンカンセンスゴイカタイアイス、ってタグもあるらしいですね。

ワゴン販売は軽減税率8%となります。買いに行くわけではなく、巡回してきたワゴンを呼び止めて、席に座ったまま受け取れます。その場で食べるのが前提ですが、持ち帰り扱いなのです。

ただし、座席に飲食メニューを設置して、注文に応じてその座席等で行う食事の提供、座席で飲食するために事前に予約を取って行う食事の提供は、標準税率10%となります。
九州を走る「ななつ星」とか、伊勢の賢島に行く「しまかぜ」とかどうなんでしょう? 乗ってみてメニューや食堂車のあるなしを確認してみたい…。

今日のまとめ

店内飲食か持ち帰りか。
一つ一つ事例をつぶしていっていますが、10月以降もまだまだ、「こういう場合は?」という疑問が噴出しそうですね。