今年の10月1日以降、請求書はこう書く(区分記載請求書等保存方式)

こんにちは。消費税にうるさい税理士 石川です。たまには直球で消費税について書きます。

いずれやって来る今年の10月1日。新しい元号になって半年弱。世の中、どんな感じになっているのでしょう。
そして、この10月1日から、消費税率が10%になり、同時に軽減税率がスタートします。

今回の税率アップに伴って、請求書や領収書には「書かなければならないこと」が増えます。
「軽減税率のことでしょう? うちは飲食料品は扱っていないからあまり関係ない」と油断してはいけません。飲食料品を扱う事業ではない方も、もらった領収書を良く見なければいけないのです。

こんな場合に、1枚の請求書に10%と8%が混在します。

会計処理では、コンビニで事務用品を買った数百円の小口支払から、1ヶ月分の掛仕入のような数十万円、数百万円の請求など、たくさんの請求書や領収書、レシートを扱っていると思います。このような請求書、領収書、レシートに10月1日以降、10%の標準税率と8%の軽減税率が混ざってきます。どんな取引で税率が混ざって来るかというと

飲食料品の卸・小売店さんや飲食店経営者さんの場合

飲食店経営者さんが酒屋さんからビールなどのアルコール類のほか、ソフトドリンクも仕入れる場合。
食品卸業者さんって本当にいろいろ扱っているので、調味料(8%、ただし料理酒やみりんなど酒類に区分されると10%)や加工品(8%)のほか、ラップやごみ袋(10%)などの店用の消耗品も一緒に扱う場合。

飲食料品関係以外の方もこんなときは注意

家呑みをしようと思って、酒屋さんでお酒(10%)とつまみ(8%)をレジで買ったときのレシート。これが経費となるかどうかはシチュエーションによりますが。
飲食店で取引先さんと一緒に食事をし(10%)、会計時に、レジ横にあるお菓子(8%)を買って手土産として渡した場合
コンビニで、朝、缶コーヒー(8%)と新聞(10%)を一緒に買った場合
※新聞は毎朝配達してもらう契約のものは8%ですが、コンビニや駅で都度買うと10%です。

もはやここからはネタ

オフィスにウォーターサーバを置いている場合。本体のレンタル料は10%で中のお水は8%。
疲れたので栄養ドリンクを。オロナミンCは清涼飲料水なので8%だけど、リポビタンDは医薬部外品で飲食料品に該当せず10%、どっちを買おうかな。

請求書や領収書に新たに書くべきこと

もともと、請求書や領収書には次のことを書かなければならないというルールがありました。
①請求書や領収書などを発行する者の氏名又は名称
②取引年月日
③取引内容
④取引金額
⑤請求書や領収書を受け取る人の氏名又は名称

10月1日から、③の取引内容と④の取引金額のところが細かくなります。
具体的には、その取引内容、つまりは商品が、飲食料品など軽減税率8%のものか、標準税率10%ものなのか、わかるようにしなければなりません。
そして、取引金額は軽減税率8%が適用されるものの合計と、標準税率10%が適用されるものの合計とをわけて書かなければなりません。取引金額自体の書き方は、税込金額の記載でも、税抜金額プラス消費税額の記載でも良いこととなっています。

記載例はこんな感じ

8%の商品に※印を付けて、わかるようにする。
税率ごとに分ける
請求書そのものをわけてしまうというのもアリ

その請求書が、軽減税率対象とわかるように書きましょう。

請求書の記載例ばかりですが、領収書でも同じです。

上記の図解は、国税庁の「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」から抜粋、加工しました。

請求書や領収書を受け取った側が追記しても良い

こんな細かいこと、小さな街角の売店まで行き渡るの?という疑念もありますよね。
手土産としてお菓子を買ったのに、領収書には「軽減税率対象商品」と書いていない、税込金額しか書いていない。そんなこともあるかもしれません。
そんなとき、わざわざまたお店に行って書き直してもらわないといけないのでしょうか。実は、請求書や領収書を受け取った側が書き加えても良いことになっています(2023年まで。2023年以降は書き直し要)。
あとになって、「あれ?何買ったんだっけ?」とならないために、領収書をもらう都度、税率別に金額が書いてあるか確認しましょう。特に飲食料品を買ったときは注意です。

帳簿の記載は?

帳簿の記載には、軽減税率の対象であるなら、その旨を新たに追加記載しなければなりません。手書きの出納帳などでしたら、※でも★でも良いので、自分でルールを決めて飲食料品に印をしてください。

例えば、ホームセンターで来客用の缶コーヒーと工場の消耗品を買ったとき、今まででしたら、出納帳に「5/1 消耗品など ×××円」と書いていたかと思いますが、10月1日以降は、「缶コーヒー ×××円★」「消耗品 ×××円」と書きましょう。

会計ソフトの入力では、私の事務所の基本システムであるTKCのシステムで仕訳入力をすると、仕訳帳を印刷したときに「軽8.0%」と表示されるそうです。

何で、わざわざ「軽」が付くかというと、今現在の8%と10月1日以降の軽減税率の8%は違うのです。何が違うかというと、消費税と地方消費税の内訳が違うのです。
今現在の8%も、実は、すぐにはなくなりません。今年の10月頃は、9月中の仕入が締日の関係で10月の請求に入ることにより旧税率8%と新税率10%の取引が混ざるでしょうし、リース料の支払いのようないわゆる経過措置により旧税率8%がしばらくが残るからです。これらの旧税率8%と飲食料品などの軽減税率が適用される8%を区別しなければいけません。

5%から8%になったときと同じではダメ。そしてここで終わりではない

消費税率を10%に引き上げるとともに飲食料品と毎朝配達される新聞が軽減税率8%という二つの税率が出てくるので、今までの税率アップより準備が必要です。
「税率二つになったら、混乱する。本当にやるの?」とワイドショーでも煽っていますが、実はこれは序章。
2023年、さらに請求書に書くべき事項が追加されることになっています。このとき、免税事業者という売上規模が常時1,000万円以下のような小規模な事業者さんは事業を続けるかどうか選択を迫られるかも・・・。これはまた改めて。